昨日から二日かけて、隆さんの2作を読了。
江戸の吉原をめぐる柳生一門の裏柳生と、吉原の争闘を描いた連作。
後水尾天皇の子に生まれ、将軍秀忠の命で、裏柳生により、密かに殺されかけたものの、近くを通りかかった宮本武蔵により助けられ、遠く肥後の山中で生育された主人公松永誠一郎。
武蔵の遺言で、25才になって江戸の吉原を訪ねた誠一郎は、吉原撮り潰しをはかる幕府と裏柳生に坑して、吉原を守ることになる。
吉原の初代総名主、庄司甚右衛門は、神君家康からの吉原創設の許し状を受けていた。その許し状である吉原御免状で問題となるのは、庄司甚右衛門という名前の前に付け足された我同朋なる3文字だった。庄司の出自は、江戸時代以降は卑しめられた社会とは無縁の人々であった。その仲間だというならば、家康もその子孫も皆人外の民となり、幕府は崩壊する。実は家康は関ヶ原の直前に殺され、その後の家康を演じたのは影武者だった、庄司と同類のものだったという、著者なりの背景がある。その御免状を吉原から奪い取ろうと暗躍したのが、裏柳生と呼ばれる暗殺集団だった。
誠一郎が天皇の血筋であることを知った庄司は誠一郎を自らの後継者にする事で、幕府に対抗しようとした。
宮本武蔵から受け継いだ剣術と、柳生家を危うくする裏柳生を葬ろうとして、当代の主、柳生宗冬から教示された柳生流の真髄を会得した誠一郎の天才的な剣技。それに坑する裏柳生総帥柳生義仙との抗争が描かれた作品。
第1作は義仙が誠一郎に片腕を切り取られたことで落着するが。第2作では、再起した義仙が、死んだと思われていた荒木又右衛門の助けを受けて、誠一郎に立ちはだかる。
誠一郎と女たち、人外の民、傀儡一族そして、男と女の関わりといった、様々な問題を、独自の歴史認識や人間観を解説しながら描くと共に、いわゆるチャンバラも手汗握るワクワクする展開が描かれる。なんとも贅沢な楽しみが得られる作品だった。
著者が長生きしていたら、この連作はさらにシリーズ化していたかもしれない。