以前に読んだ「柳生薔薇剣」の続編。
前作で、最愛の姉を失い、意気消沈した柳生十兵衛。小姓としての出仕もままならず、ついに勘当され、柳生の里に蟄居する身となる。
そんな十兵衛を襲った柳生新陰流最大の危機。
柳生の里、一族の菩提寺で稽古をしていた若者たち三十六人が、突然現れた念仏僧の一団に襲われ、皆殺しとなる。さらに近くで遊んでいた十兵衛の遊び仲間で、一族の長老たちの孫3人も殺される。その上、一団は柳生新陰流の太祖、石舟斉宗厳の遺骸を奪い去った。後を追う高弟たちも次々と殺されていく。なぜか、新陰流に繋がるものたちは全員、その剣術を失い、あっけなく倒される。
現場で十兵衛は、念仏僧姿ながら、一味とは思えぬ老剣客と女人の剣士と出会う。
江戸に向かった急使は殺され、柳生の里の事件は、宗矩には伝わらない。蟄居中の十兵衛が江戸に向かい、事情を父に話すも、信用されず、狂ったかと思われ、座敷牢に閉じ込められてしまう。
しかし、一門の危機を救えるのは、剣術を失くしていない兄だけだと確信する弟の友矩により脱出し、騒ぎの原因を調べるべく旅立つ。
騒動の陰で動いていたのは、柳生と同じく将軍家剣術指南の小野派だった。柳生に比べ、人気のない一門、しかも総帥の小野忠明は病身だった。その一門の前に現れたのが、小野派一刀流の太祖である伊藤一刀斉。彼が一門に提案したのが、柳生と伊賀者の流れにあるものすべてを無力化させる秘法断脈の術。それにより、小野派が唯一の将軍家指南となる。さらに、彼らの背後にいるのが、徳川家康の第六男である忠輝。今は兄である二代将軍に疎まれて、配流の身で諏訪にいる。そして、三代将軍を柳生と伊賀者の手で殺し、四代将軍に忠輝をつける。
実は伊藤一刀斉も忠輝も、今はなき朝鮮の古代国家百済の王家の血を継ぐものだった。かつては百済と同盟していた日本だが、いつか忘れられ、百済は滅び、遺民が数多く日本に帰化している。日本の国を乗っ取り、それにより朝鮮と交渉して、百済の旧地を回復する。場合によっては朝鮮を支配し百済国を復活させるという、壮大な企みを秘めた一刀斉の企みだった。
呪術の前に手も足も出ない体たらくを公にはできない十兵衛は、密かに企ての粉砕に立ち上がることになる。
そんな十兵衛の相棒となるのが、なんと十兵衛を失意にさせた姉と同じ名前を持つ、小野忠明の第一子である典香。十兵衛の姉、矩香と同様に、父親直伝の剣術の才をもつ美人。
敵の本拠地で一刀斉の面前で、勝負した二人は相討ちとなるが、それをきっかけに、一刀斉に立ち向かうべく、相棒となる。それも男女の交わりを持ち、夫婦となることで、一心同体の剣士となるというもの。それが効を創し、敵を蹴散らしたが、一刀斉には歯が立たない。そんな二人の前に現れるのが、柳生石舟斉。秘術により死骸を盗まれたが、かえって生き返った。相討ちだと思われたが、一刀斉は復活。それに立ち向かう十兵衛と典香。前は手を繋いでの剣術だったが、今度は合い向きに抱き合い、二人で一刀という体制で立ち向かい、勝利をつかむ。
伝奇小説だとわかっていても楽しめる。史実に沿った背景の構成も面白い。