かつて、十年前に京都で、英会話スクールで知り合った6人が、十年ぶりに再会し、一緒に鞍馬の火祭り見学へ行くことになる。十年前にも火祭りに出掛けた彼らだったが、その時に仲間の一人、当時二十歳の長谷川さんが失踪した。
今回の会合の発起人である大橋くんは、会合の前に街の画廊近くで、長谷川さんに似た女性を見かける。画廊に入ったはずなのに、中にはいなかった。代わりに目を引いたのが、展示されている各地の夜の風景を描いた作品。夜行というシリーズの絵だった。岸田道生という画家の銅版画だった。
宿に集まったみんなに、その話をすると、みなが旅先で、その絵を見たことがあるといい、それぞれ思い出を語り出す。
中井さんが語る尾道の夜行。
武田くんの奥飛騨の夜行。
藤村さんの津軽の夜行。
田辺くんの天竜峡の夜行。
どの絵にも登場する長谷川さんを思わせる女性が描かれた夜景。
皆の話が終わる頃、宿についた頃に降り始めた雨もやんでいて、皆で鞍馬に向かうも、火祭りはすでに終わっていた。
その帰り道、混んでいる電車を避け、歩いていく途中で、大橋くんはみなとはぐれてしまう。一人、駅まで戻った大橋くんが中井さんに電話すると、驚かれてしまう。何かがおかしい。
会って聞いてみると、この十年行方不明になっていたのは、長谷川さんではなく、大橋くんだったという。
宿で中井さんに聞いた旅のエピソードは間違いないという。
大橋くんの話を聞いた中井さんは、長谷川さんは失踪せず、生きているという。大橋くんが見た画廊も知っているというので、行ってみると、そこに展示されている絵が変わっていた。夜行シリーズには、それと対になる幻の曙光シリーズがあると聞いていた大橋くん。今、中井さんと行ってみたら、展示されているのは曙光シリーズだった。
大橋は岸田に会いたいと言い出す。連絡してみると、電話に出た奥さんが、なんと長谷川さんだった。
岸田夫妻に会いに行く大橋くんと中井さん。
尾道で出会った女子高生の長谷川さんと岸田、それがきっかけで生まれた彼の作品。死んだものの世界である夜行と、生きてるものの世界、曙光。その接触点で接する二つの世界、大橋くんはどうやら二つの世界を生きたかのようだ。

なんとも不思議な話で、結末もよくわからないが、不気味だが心引かれる気もする。森見さんらしい世界とも言えるのか。