現在の国立国会図書館、戦前には帝国図書館と呼ばれたものの歴史と、その歴史に興味を抱いた一人の女性の生涯を描いた小説とからなる作品。
400ページあまりの大作で、結局また1日がかりで、ようやく読めた。
作家志望だった、著者とも思える女性が語り手となり、偶然出会った老女きわこさんとの関わりを描いている。
白髪の還暦くらいのきわこさんと出会ったのは、上野公園のベンチだった。小説家を志望しながらも、いまだ雑文書きだった三十代の語り手。きわこさんの端切れを合わせたようなきてれつな衣装に驚く。気さくに話しかけてくる彼女と波長があったのか、つい隠していた小説を書いていると話してしまう。上野図書館内の国際こども図書館に取材に来たと話すと、きわこさんは、昔はよく来ていたし、一時は住んでさえいたという。その後も偶然会ったりして、きわこさんの家に行ったりもするようになる。
そんなきわこさんの家には樋口一葉の全集があり、図書館の歴史に関する本もかなりある。関心がある様子。そして、小説家志望なら、いつか帝国図書館の歴史を小説にしてくれないかと頼まれる。
福沢諭吉の提案で始まった日本初の国立図書館である帝国図書館。その意義を認められず、その設立までには紆余曲折があった。設立後も戦争が起きる度に予算を奪われ、結局事業開始から五十年あまりたった昭和になって、ようやく設立案が制定される。そしてできたのは当初の構想の3分の1程度だった。東洋一の、いや世界一の図書館という夢は潰えて、太平洋戦争に飲み込まれる。
戦後、国会図書館として生まれ変わるが、上野にあった帝国図書館は分館となる。
小説家となり、結婚し、一時期疎遠になったきわこさんに再会した語り手。断片的に聞いていた彼女の少女時代の思い出。上野で一時期、復員兵とオカマに世話になり、図書館の歴史を書いていた復員兵から、エピソードをいくつか聞いたことがあるというきわこさん。
きわこさんの死後、孫娘だという女性に連絡を受け、きわこさんの過去を探ることになる。
夫の戦死で、親戚をたらい回しにされたきわこと母。義兄と再婚することになるきわこの母親。一人親戚に預けられ、家出して上野にたどり着いたきわこ。その後、再婚した母に引き取られ、九州に行く。結婚して娘を得たものの、娘の大学入学を機に、離婚は認められないまま婚家を出て、上野にたどり着いたきわこ。
戦争を挟んで生きた一人の女性の波乱の日々を描くと共に、彼女が生涯関心を持っていた帝国図書館の歴史のエピソードを、幕間劇にした構成の作品。
かつての帝国図書館を利用した文豪たち、乏しい予算に苦しみながらも図書館設立に頑張った人々。なかなか興味深い。