綾瀬署警務課課長代理、柴崎警部のシリーズ第3作の短編集。
刑事課盗犯第二係所属の新米の女性刑事、高野朋美巡査が警察手帳を紛失したという事件が、今作の最初の事件。その重大さに気づかないのか、上司にも報告せず、新聞記者の質問から判明し、署の幹部は頭を抱える。帰宅途中の電車ですりとられたと思われたが、高野に聞きただすと、本来身につけておくべき手帳を、バッグに無造作に入れていて、外からでも見える状態だとわかる。犯人探しを進めていく過程で、柴崎は別の様相が見えてくる。
第2の事件は、建て壊し寸前のアパートの5階から転落死した少年の事件。血液検査で脱法薬物が見つかり、薬物による幻覚で事故死したかにも思えたが。調べを進める内に、最近の少年犯罪の特異性が浮かび上がる。もと不良少年を垂れ込み屋にして成績をあげていた刑事の秘密を暴き出す柴崎。
第3の事件はストーカー事件。ストーカー被害にあっていた女性の訴えで、男を厳重注意していたのに、ストーカー行為が止まらない。その上、男は自殺する。不審を感じた柴崎が追求していくと、ストーカーの男を煽り、絶望させた被害者女性のあくどい面が浮かび上がってくる。
病院に入院していた男が点滴液の取り違えで、死にかける事件が起きる。ただ男の態度に不審があり、さらに調べていくと、入院した病院看護師のミスではなく、看護師をしている妻の殺害にも思えてくる。再婚した妻の連れ子は虐待されていた。そのための犯行かと、取り調べると、妻は否認。さらに調べていくと、虐待は夫婦ともに行っていること、夫婦で共謀して病院をゆすっていたことが判明する。
第4の事件は、マンション暮らしの老夫婦宅への強盗事件。寝たきりのもと裁判官は、強盗犯に刺された。しかし、手口に合う強盗犯は見つからず、管理人に不審があり、女性刑事の頑張りで、その秘密が明らかになる。傷害事件の真相は介護に疲れた妻の無理心中未遂だとわかる。一人きりになるのを恐れ、妻をかばう夫。しかし夫にうんだ妻は夫との暮らしを続けたくなくて、殺意のあったことを証言し、服役を望む。老老介護の悲劇でもあった。