弥勒シリーズ第7作。
油問屋東海屋の主五平が女の怨みで尋常じゃない死に方をしたと世間で騒がれた。五平は一人寝の床で、口一杯に牡丹の花弁を呑んだ姿で死んでいた。それを見つけた後妻のお栄と使用人のおときと作蔵はその直前に、お栄の鏡台の引き出しで女の髪を見つけていたし、五平の枕元で女の幽霊を見た。さらに、翌日、五平の若い妾がその家の庭で、血まみれで死んでいた。最近五平に別れを告げられ、かなり怒り、五平を恨んで殺してやると言っていたとも女中が証言した。
しかし、幽霊が五平を殺したとはもちろん納得できない北町同心の小暮と岡っ引き伊佐治。あいにく事件が起こった頃は二人とも病に倒れ、すぐには調べられなかった。遅ればせながら調べ始めた二人だが、最初は手がかりはなにもない。
五平の死因はわからないが、口に突っ込まれた花弁ではない。ならばなぜ、花弁が突っ込まれたのか?花弁の強力な香りで、何かの臭いを消したのではないか?最初の手がかりはそれだった。薬のようなもので死に至ったのか?
折しも伊佐治の嫁のおけいは二度目の流産で子をなくし、心を病んで、店を飛び出したきり行方知れずとなる。
お栄に話を聞くことで、五平が一時、気鬱になり、見知らぬ医者の高価な薬で回復したことがあると知った伊佐治。
一方、遠野屋清乃介を訪ねてきた兄の家来に大金の無心をされる。兄が死病になり、痛み止のため、高価な薬を使っていると聞いた清乃介は、五百両を手渡す。
その小判を包んでいた遠野屋の名が入った紙を懐にもつ、医者風体のなぶり殺された死体が見つかる。兄の元を訪れた清乃介は、処方された薬がアヘンを含んでいることに気付き、その出所を家来に質すと共に、兄を見知りの医者に託す。
妊娠した女など二人の女の遺体が見つかる。その女たちにもアヘンの臭いが残る。女たちをアヘンと共に客に供する一味の存在に気づく小暮。
どこからか逃げ出してきた伊佐治の嫁のおけいを偶然助けた清乃介と伊佐治。おけいに関わった女もアヘンの臭いを持っていた。
病の重い者に高価な薬を処方して、大金を得ていた一味の存在に気づく小暮たち。隠れ家を突き止めたものの、彼らは頭目とおぼしき女に始末されていた。
その頭目は以前、奉行所から追放の刑を受けた人殺しの女だった。江戸を去るおりに、小暮に会いに来た女、お常。