読んでいて気がついた、これ読んだことあるって。それでも最後まで読んでしまった。小路さんの作品にはそんな魅力があるんだな。
神奈川県の山村にある駐在所に赴任してきた夫婦の春から冬の様子を描いた作品。
駐在警官の箕島は、もとは横浜の所轄の刑事だった。そして年上の妻花は、大学病院の外科の医師だった。治療のかいなく亡くなった患者の遺族に恨まれ、襲われたときに、利き手の右手に怪我をし、メスが握れなくなった花。刑事として、病室に聞き込みに行ったのが、二人のなれそめ。それがいつか結ばれることになる。花の心の治療のためにと、自ら山村の駐在所勤務を願い出た箕島。
100軒余りの戸数しかない田舎。もとは雉子宮村だったが、今は麓の町の行政区に編入されている。昔からある神社の神主清澄と、寺の住職昭憲が、ここの世話役。非公式に選ばれる村長高田もいる。
駐在の裏の山の中腹には小学校があり、さらに上に神社がある。
駐在所はかつての問屋場で、二階建ての日本家屋。玄関を入った土間が駐在所になり、隣の部屋は図書館になっていて、学校帰りの子供たちが遊びに来る。
のどかで何もない山村に赴任した駐在所警官夫婦が経験する半年の事件を描いている。
最初の事件は食中毒で駐在所に保護されたアベックの若者。本署から連絡があり、強盗犯が逃げていて、その故郷がこの村だという。どうやら保護したアベックが怪しいと思った箕島は、事件の詳細をかつての同僚刑事に確かめた上で、独自に処理する。暴力団の経営する店で働いていた若者が組長の世話になっていた女を助けて逃げ出したらしい。二人をなんとか救おうと努力する箕島。
大嵐で倒れた木により、寺の窓が割れた。同時に秘仏が盗まれたと言ってきた住職。現場を確認した箕島は怪しむ。70年に一度開帳される秘仏は本当にあったのか?もしもなかったなら、窃盗罪は成立しない。しかし、今もみたことがある老人がいるのでは、2年後の開帳をどうすればいいのか?悩んだ住職が思い付いた盗難事件。いち早く真相に気づいた箕島は、すべてをなかったことにする。
最近蛇が頻繁に目撃され、幽霊が出たという噂も出てきた黒滝に向かう山道。ある日、川床で骨折した炭焼きの民蔵。事故の現場付近を詳しく検分した箕島は、民蔵のしようとしたことに気づく。川原で偶然見つけた黄色い鉱石を、どうやら金鉱と勘違いした民蔵は、独り占めにするために、他人が近づかないようにと、蛇を放ち幽霊の噂を流した。箕島により、金鉱ではなく黄鉄鉱だと知って、付き物が落ちた民蔵。箕島は罪に問わずに放免する。
川原で見つかった金持ちの釣り客の遺体。身元を示すものが一切ないことや、近くに、乗って来たはずの車がないことに不審を感じた箕島は、第一発見者に密かに見張りをつける。さらに山奥の泉の周辺で見つかった車のあと。誰かが遺体を身元不明遺体として処理させようとしたらしい。怪しいのは第一発見者で、姉を東京でなくした若者。事情を聴いた箕島は、遺体の身元を示すものを提出させることだけで、許す。