鎌倉の私大に通う美咲。実家は新潟の酒屋。鎌倉では母方の祖父母のもとに寄宿したが、建築士だった祖父は昨年に他界し、祖母と暮らしていた。一時は落ち込んでいた祖母がようやく普段の生活を取り戻したところ、最近悩んでいる。その原因は祖父の部屋から見つかった熱烈なラブレター。しかも宛名が祖母とは違う女性名。なんとか祖母を慰めようと、ラブレターの書き手が祖父ではないと証明したいと思った。筆跡鑑定すればわかるのではないかと。専門家に頼むと高額な費用がかかるというので、彼女が通う大学の筆跡心理学の准教授裏辻に頼んでみると、引き受けてくれなかったが、美咲の同級生に筆跡鑑定ができる学生がいると教えてくれる。それが、東雲清一郎。イケメンだが、誰とも付き合わず、孤高の男で有名だった。著名な書家でもあるが、大学の書道部にいるくせに、一切文字を書かない変人。話しかける美咲にも容赦なく繰り出すシビアな毒舌。何度も話しかけてみるも相手にしてくれない。
ようやく弱点の一つ、日本酒好きを利用して、実家の父のつてで、幻の銘酒を取り寄せて、それを交換条件にして、ようやく鑑定してもらえる。
鑑定の結果は熱烈なラブレターは祖父の書いたものだった。ただ、鑑定したラブレターには続きがあるはずだし、鑑定をより精密にするには、祖父の書いたものをもっと見たいという。こうして、祖父の部屋へ招待した東雲が導き出した鑑定結果は?
祖父が書いたラブレターは友人に頼まれ書いた代筆だった。しかし、そこに込めた思いは、祖母へのものだった。

一回切りだと言われていた鑑定を美咲はなぜか、引き続き東雲にしてもらうことになる。そんな筆跡鑑定によるささやかな事件簿が4つ納められている。

高校時代の友人で、近くにいるものの一人紫織が、東雲という恋人ができたものの、あまりのいいかげんさにあきれて別れたという。それを聞いて、心配になった美咲が本人に確認すると、知らないという。誰かが彼の名前をなのっているらしい。犯人探しを始める東雲に美咲は協力。犯人が書いたメモ書きの字から、東雲は犯人を突き止める。その過程で、酒に酔わされた美咲の危機を救ったのは東雲だった。そっけないくせに、案外と優しい。美咲に多少心引かれているのか?

前衛書家が最後に残した作品の鑑定、タイトルを突き止めることに、付き添うことになる美咲。方向音痴の東雲。

美咲の名前と写真で、ネット上で男を求めるあばずれとして噂になる美咲。終始見られたり、男が誘ってきたりして困惑する美咲。さらには見知らぬ男に言い寄られ、あわや強姦されかかる美咲。怒る東雲は美咲のために立ち上がる。美咲の背中に張られたいたずら書き。その筆跡から学生であろう犯人を突き止めるべく、裏辻教授がもつデーターを対照にして、同じ筆跡の犯人を探す。
見つかった犯人はかつて東雲にふられたストーカー女子大生。最近仲がよさそうな美咲を脅すために引き起こした騒ぎだった。
普段は使わない左手で東雲が書く文字には、人に迫るなにかがあるようで、たった一文字で彼は犯人に自首させてしまう。恐るべし、東雲。彼が滅多に書かないのも訳があるのだろう。