文政9年元日早々、小藤次の旧藩森家の近習頭池端が訪ねてくる。殿様が臥せっていて、翌日の新年の登城を拒んでいると言う。家臣の誰にも事情がわからず、お気に入りの小藤次ならと、呼びに来た。
ひそかに殿様に会って、事情を聴いた小藤次。城中で知らぬ間に殿様宛の書状が入っていて、そこに新年登城の行列から、森家の鑓先を頂戴するという脅しが書かれていた。まさに、小藤次の最初の偉業を真似たもの。
ほっておけず、その対策に乗り出す小藤次。二度の襲撃を見事打ち負かした小藤次だが、襲撃したのは金で雇われた剣術家。背後で画策したのが誰かは明らかにされず、幕府内で処理される。
今回のテーマは3つ。1つ目が上記の騒ぎ。
2つ目は、背も延びて、大人びてきた小藤次の一子駿太郎。母親りょうと父親小藤次のもとで、すくすくと素直に成長したものの、一つ心配事があった。同世代のものとの交流が全くないこと。それを察した奉行所同心の近藤の勧めで、八丁堀近所にあり、奉行所の子弟が多くいる鏡心明智流桃井道場の見学に赴いた駿太郎と小藤次。その雰囲気が気に入った駿太郎は、道場に通うことになる。
3つ目は、鷹狩り帰りの将軍家斉が、ひそかに、小藤次とりょうが住まう須崎村の望外川荘を訪れることになる。過日、場内で会った小藤次を気に入った様子の将軍。丹波行きが縁で、りょうが始めた絵巻物の製作に興味をもち、見たいと言い出す将軍。
さらに、森家の鑓先騒ぎの黒幕は、今は落ちぶれた田沼家の重役たちだった。今の殿様は温厚で、幕府の役職にもついているが、その殿様も同行してきて、家臣の無礼を小藤次に謝罪する。
馴染みの面々との再会が、シリーズ作品では何より楽しみだが、それも一気に読んでおしまい。もう年内には、続きはでないだろう。読むまでは楽しみだが、読んでしまうと、寂しくなる。