暑い、当然ながら部屋の扇風機だけでは、汗は止まらないし、時々頭がボーッとする。
最近便秘気味なのに、冷たいものをいくつも口にしてしまい、腹がタプタプする。

お馴染みの北村さんの日常の謎的ミステリーの短編集。
主人公は出版社の編集者田川美希。職場や作家との話の中に出てくる、ちょっとした謎を、高校の教師をしている父親の助け荷より謎を解くという趣向。父親は古書籍マニアで、古本アサリが趣味という。今では忘れられた古い本や雑誌で読んだことがきっかけになって、謎が解かれるという段取りになっている。
最初のなぞは、最近人気になった作家に送られてくる感想文。それが次々と名前や住所を変えて送られてくる。思い余って、当の作家に聞いてみると、正体は作家の父親だった。昔から子供のことにしゃしゃり出てくるでしゃばりの父親だった。その住まいが長野県の中野市。美希の父親は東京の中野に住んでいる。
美希が作家の講演で聞いたちょっとした謎解きを父親に話してみると、中野の父は解答を待たずに鮮やかに解き明かす。

二番目のなぞは作家松本清張がデビュー前にかいた小品。それをトーマス・マンの作品の盗作だと非難した批評家がいた。その真意を調べる美希と、父親の該博ぶり。
太宰治の作品に登場するガスコン兵という言葉の由来について、美希は中野のお父さんに尋ねる。時代の差か、お父さんはすぐに思い付く、シラノ・ド・ベルジュラックを。おしゃべりな彼が、饒舌的な太宰の小説執筆中に連想されたのだと。
ある作家が古書店で手にいれた特典付きのブルーレイ。しかし、肝心の特典だけが見られない。その謎解きもお父さん。偶然か、同じものを持っていた彼は、特典のないDVDと、中身がすり代わっていると看破する。
定年過ぎても編集者をやめない美希の先輩女性。入院した夫が口にしかけた言葉の意味がわからない。キュウリ。お父さんは難問だと思ったこの謎を一瞬で解き明かす。夫婦は午年と丑年。お盆の飾りにするキュウリの馬と牛の飾り。
作家の発案でできたソフトボール部。その懇親会で、児童書を扱う編集青年が語った佐野洋子の「100万回生きたねこ」の感想に違和感を持つ美希。僕はあれは絶望の書だと。100万回も死んで生き返るねことは生きてないねこではないのか。そして最後にようやくめぐりあい、死ぬことができた。
尾崎紅葉の死んだとき、弟子の徳田秋声と泉鏡花が喧嘩をしたというエピソード。ある作家が講演記録にのせたそれを追求する美希。倒れて入院したお父さんは、真理は、時の娘だという。イギリスの作家テイは、「時の娘」という作品で、悪名高いイギリスの王リチャード3世の評価を覆す謎解きを展開する。同じようにして、明治の文豪2人の喧嘩も吟味してみれば。
菊池寛に関する対談に参加した作家が、清張の写真を見てつぶやいた菊池寛はアメリカか、という言葉が気になる美希。
ネクタイのストライプには右に上がるものと左に上がるものがあり、前者がイギリス式、後者がアメリカ式とかかれた本をお父さんは見せてくる。世界の様々な事象の違いを写真で見せてくれる本。

様々な本を買い漁るだけではなく、それらに目を通し、自分の物してるお父さんはすごいね。