京都思い出探偵ファイルの第2作。単行本では、「思い出をなくした男」となっていた。
もと刑事だった実相寺浩二郎は、息子の死と、その後の妻のアル中をきっかけに、時間の不規則な警察をやめて、探偵業をはじめた。それも、思い出という、人生の忘れ物を見つけ出し確認させるという、一風変わった探偵だった。
彼の探偵事務所には、経理を担当するアル中から復帰しつつある妻三千代、調査員の女性は2人。もと看護師でシングルマザーの由美と、両親を殺され自身も命を狙われるという過酷な恐怖を経験した佳菜子がいるだけの小所帯。前作にはいた調査員の本郷雄高は、本来の志望だった時代劇の俳優になるために、ここをやめていた。主任探偵である由美が、テレビ番組の人生相談に出演し人気を得てることで、顔が知られてしまい、最近は探偵調査には参加していない。その手不足の解消のために、浩二郎は知り合いの医者から紹介された若者を雇おうとしていた。脳科学の医師一家の息子で、医師免許も持つ秀才肌の平井真は、一見人付き合いが悪く、なにか影のある青年だった。正式に調査員になった彼が今後どう活躍するか?

今回の事件ファイルは4つ。扱った事件ごとにファイル名をつけ、記録に残している。
1 雨の日の来園者
廃園が決まった遊園地の支配人の依頼で、20年前に来演していた父親連れの少年の行方を探すことを頼まれた。雨や大風の日に限って来園していた親子。手がかりは、写真好きな支配人が撮りためていた親子の写真だけ。そこに写る些細な手がかりから調査は始まる。

2 大芝居を打つ男
時代劇の端役を演じてる雄高は、斬られ役で知られた先輩が監督にダメ出しを食らったのを機に失踪したことが気になり、調査を依頼してくる。

3 歌声の向こう側に
夢を抱いて上京し、日頃のうさを晴らした歌声喫茶。そこで知り合った初恋の女性の行方を知りたいという依頼。良縁がありながら、彼への思いに一途だった女性を振りきるように、故郷へ戻った男。はたして会ってくれるかどうか、一緒に歌を歌ってくれるかどうか?

4 思い出をなくした男
百貨店の地下の喫茶コーナーで意識を失った記憶喪失の男。交通事故にあったかのような様子だったが、まるで記憶がなく身元もわからない。世話をした喫茶コーナーの女性が、はじめは調査を依頼してきたが、次第に男を思うようになった彼女は、身元を知ることを恐れるようになり、調査をキャンセルしてきた。ようやく身元への端緒をつかんだ由美は諦められず、記憶喪失の男を説得して調査を続行。ついに身元を突き止める。男には妻もあり娘もいた。ばつ二を乗り越え、新たな恋に生きようとした初老女性と、男の家族との板挟みになる由美。単なる記憶ではなく、思い出は本人個人にとって大切なもの。人生のなぞを解きほぐすことで得られた思い出は、乾いた心に潤いを与えてくれる。