修学旅行などの団体客が貸しきりにする近鉄の二階建て電車あおぞら号。その電車には都市伝説が今も伝えられている。
貸し切りなのに、なぜか部外者だと思われる人物が乗り合わすことがある。その人物に会えるのは幸運だと。ソラさんと呼ばれる、その人は寄木細工の箱を持っていて、その箱を開けると自分の願い事が叶うという。
そんな都市伝説を今も心の片隅に残している幾人かの不幸な男女が織り成す人生模様を描いた作品と言えばいいのか。
東京タワーのレストランに勤める竹宮ひかる、結婚式場でウェディングプランナーをしている島尾日菜子、ブラック企業で働く森沢達郎、あおぞら号に乗っていた自称ソラの石上哲也、塾教師の住田真知子、哲也と駆け落ちした旅館の仲居だった古間康子。
誰もが悲惨な過去を持ち、それから逃げようとしていた。暴力を振るう父親、娘に異常に依存する母親、好きだった父親が家を出て落胆する娘、シングルマザーで得た息子を死なせた母親、子ができないからと同棲相手に捨てられた女。
さまざまなしがらみにより、複雑に絡み合う人間関係。最後には、そのしがらみがいくぶんかは明らかにされ、ゆるむことで、再出発を迎える主人公たち。
抱えきれない過去を持ち、今もまともに生活できてない主人公たち。読んでるときは、少しうんざりして、途中でやめようかとも思ったが、最後まで読んでみると、意外に暗さを感じない。タイトルの意味に通じる気がする。
最近読んだ「木もれ日を縫う」「額を紡ぐひと」の読後感がよかったので期待していたが、最後まで読むと、それが裏切られなかったとわかる。