交通事故で唯一の肉親である父親を亡くした大学生の片瀬在。尊敬する父の遺言通り、弔い事一切をしないで済ませた。生前立ち入り禁止だった父の書斎で遺品整理を始めた在は、母子手帳を見つける。父と母でない女性の間にできた赤ん坊の名前は彼と同じ。日付は彼が生まれる数年前だった。
これは誰なのか?父には秘密があったのか?
事故の知らせを聞いて家を出るときに見かけた古い制服の女子高生、彼女は誰か?幽霊か実在の人なのか?
疑問にとりつかれた彼は、一人父の過去を調べていくことになる。その真実に近づくほど不穏な気配が漂う。今も残る確執、そのために苦しむ少女。
誕生時に母をなくして生まれた父親は、その後祖父母と在の母を看取っていた。家族の縁が薄く孤独だった父親。
高校時代につきあっていた彼女が妊娠し、同棲していたことがある父親。出産前に彼女は事故死していた。その彼女の姪の水樹と知り合う在。
愛する女性の死の間際に現場を離れた父の思いは何だったのか?疑問を明らかにするために、父親の過去に迫り、追求していく在。
すべてが明らかになったとき、自宅の庭で在は、ささやかな弔いを行う。
不幸な家庭で育った水樹と、新たな家庭を作ろうとする在の、ラストの決意がよかった。
弔い事は決して形式的なことだけではない。弔うことによって、残されたものは新たな生に生きていける。