高校3年の菜月は、子供の頃に憧れた優しい魔法使いに再会する。小学校の頃、長年愛読していた絵本がばらばらになり、泣き叫んだ。祖父母が4才の誕生祝いに買ってくれた宝物だった。新しく買ってやると言う母に逆らい、修理しようと近所の図書館へ行き、窓口で修理を頼むが、断られる。公立の図書館なので、私物の修理はできない。そんなところに顔を出した老人が、話を聞いて、直してやると言ってくれる。1週間預ければ修理すると。出来上がった絵本は前通りと言うよりも、丈夫になっていた。
その老人を魔法使いだと思い、その弟子になると決めた菜月。
でもその後は親の言うままに進学して、いつしか忘れていた。進路を決める時期を迎えて、迷っていた菜月。図書部の先輩が夢を叶えて、大学図書館の司書になったことを聞いて焦る菜月。
そんなときに、魔法使いに再会した。書籍修復家として知られた豊崎先生。図書館の講座で、先生が講師の書籍修復を体験して、その弟子になると決めた菜月。
最初は拒否していた先生だが、彼女を書籍修復家に引き込むきっかけが自分だと知った先生は、弟子にはしないが、1年間修復の基礎だけは教えてやると言う。その後試験に合格すれば、仕事にできるように世話をすると。
こうした始まった先生と菜月の日々。
かつて、菜月と同じように彼を魔法使いと呼び、修復家になりたいと言っていた孫。引退して孫の近所に越してきた先生は、孫は心変わりしたと知る。以後弟子もとらず、細々と修復をしてきた先生。
菜月との師弟の日々が彼を変える。新たな生き甲斐を見つけたかのように。
図書館の和装本の修復、子供相手の和装本作りの体験会、様々な体験を得て、卒業試験を迎える菜月。合格後、菜月を先生が発起人の一人である修復の会社に推薦しようと思っていた先生。
あくまでも先生の膝下で弟子として一人前になることを夢見ていた菜月。
試験は合格したものの、思惑の違いから喧嘩別れする菜月。心配する先生の奥さんが、菜月の両親や親友に働きかけて、菜月に再度のチャンスをつくる。
修復すること、修復の結果持ち主から得る感謝、そんな人の面からしか修復を見ていなかった菜月。修復される書籍への思いに欠けていたことに気づく菜月。何のために修復するのか?
反省し、改めて修復家を目指す決意をした菜月を、先生は最後の弟子にすることを許す。
先生の専門が和装本の修復と言うことで、修復修行中の描写は興味深いものだったが、多少物足りなさも覚えた。もう少し、身近な書物の修復について知りたい気がした。