なんとか最後まで読んだものの、なんというか、ある意味怖い話だな。
警察官上層部の権力争いとでも言えばいいか。
舞台は大阪に次ぐ関西のある県。
副知事を勤める官僚出身の女性が進める警察官の経費節減の施策。それに反発し、なんとかやめさせようとする警察本部長。
副知事は実は警察が長年敵視し、監視してきた社会労働党の秘密の幹部でもあった。そうした連中を密かに調べるのが、表では警備部や公安部。そこには一般には知られず、秘密に捜査対処するグループ、アサヒがあり、そのなかでもエリートと呼べるワクチンと呼ばれる精鋭部隊がある。一方で、警察庁長官のみに管理される警察官ではない秘密警察があり、国会図書館警察庁支部と言う。アサヒに比べて、人数も少ないが、それでいて隠然たる力を持つ。アサヒは彼らを消滅させるか、配下にしたいと願い、反対に図書館はアサヒを出し抜いて、自分の存在価値を認めさせようと、画策する。
交番勤務から刑事に昇進したばかりの女性警官諏訪菜々子が上司の佐潟警視との不倫がばれ、交番勤務に降格。相手の警視は特別に罰せられず済む。そんなときに、無人となる交番で次々とぼや騒ぎが起こる。会えなくなった警視に会いたくて、彼が当直の日に火事を起こしていた。現場に出るのが好きな警視を一目見たくて。
このささやかな事件が発端となり、上層部のそれぞれが、各自の目的に為にこれを調べ始める。
佐潟警視を追い落として、警備部に返り咲こうとする警察学校教官の清里。彼は昔、大学時代の恋人だった、現副知事に警察情報を売ったことがある。そして、佐潟警視も同じことをしていると疑い、その証拠をつかぬために、放火していた諏訪巡査を利用しようとする。菜々子のもと恋人だった交番巡査黒瀬は、菜々子のことが気になり、つけ回して、放火現場を確認していた。
以前から副知事を疑い、監視していたアサヒ。精鋭のワクチンを専従させていたが、県警の警察監の命令で放火事件が気になり、ワクチンの一部を本部に内緒でそちらへ流用。
アサヒを追い落とそうと密かに動きだす図書館。
三つ巴四つ巴の様相を見せる展開。菜々子を佐潟に近づけ、副知事との情報の売買を立証しようとする清里。清里の奴隷になった菜々子を助けるために、清里を殺害しようとする黒瀬。副知事と清里の情報売買の様子をアサヒにより映像に納め、副知事を牽制する警視監。清里を自動車事故で殺す黒瀬。その様子を映像に納めたアサヒはその犯人が副知事であるかのように偽装して、副知事の抵抗を奪う警視監。
自暴自棄となった黒瀬は、清里の部屋で火をつけ、証拠隠滅をたくらみ、菜々子と拳銃で自殺しようとする。しかし、菜々子は無事助かる。
終章に至って、なんとその菜々子が実は図書館の諜報員であったことが明らかになる。
なんとも奇想天外な話だが、警察官僚出身の著者だから警察関係の知識が豊富で、警察内での符丁など、興味深いし、なかなか読ませる作品だった。
政治がらみというのは、やはり苦手だし、嫌な気持ちにさせる。事件が解決して、ハッピーエンドとはかけ離れていて、読後感はあまり楽しくないな。