ファンタジー世界を舞台にした作品で人気を博した覆面作家が、その正体を明かしてから発表した近未来の警察小説。
警察官として各部署を経験した後に、警察大学の主任教授として退官したという経歴を明かしてから、出た本作。警察組織の内部の緻密な説明は納得できるリアリティが感じられる。その上で登場する主人公が変わっている。ゴスロリの服装で登場する捜査本部を統括する管理官箱崎は、キャリアで若い女性。のちに、警察庁長官のお嬢様だとわかるが。
普通は本部に居座って捜査の全体を統括する管理官なのに、箱崎管理官はなんと、定年間近でやる気のない浦安巡査部長を相棒にして、現場へ出て捜査をして行く。
最初の事件は、東京オリンピック後に新設された湾岸区にできた環状地下鉄の日比谷駅で見つかる。ホームにあるアクアリウム内で、全裸の女性の遺体が発見される。左耳が切断されていて、口内に針金細工の五芒星が見つかったことから本部が立ち上がるも、最初は被害者の身元がわからない。しかも遺体はよそで水死して遺棄されたようだが、どの様にして持ち込まれたのかがわからず、難航する。それを尻目に、単独で捜査に突っ込む箱崎管理官。
やがて第二第三の遺体が同じように不可解な状態で発見され、連続殺人事件となる。
見かけとは違い、頭脳も洞察力も、さらに行動力もある箱崎管理官は、新たな遺体まで見つける。
一方、捜査本部ないには、警視庁、所轄の刑事だけではなく、別の部署のものも紛れ込んで、この事件をおっていることが明らかになる。ひとつは公安警察、そして秘密警察とも思われる一派の人間も紛れ込んでいる。
そうした一派の存在にいち早く気づいた箱崎は、いまだ本部では知らない被害者たちの身元にも気づくと共に、連続殺人のやり方の背景にある思想にも気づく。つまり陰陽五行に基づいて被害者と、その状況が選ばれていることに気づく。しかも、箱崎は警察官の各分野の職人的なプロたちの協力を得て、捜査を進めていき、ついに犯人にたどり着くものの、横やりが入り、自決させてしまう。
湾岸区の発展の基礎となった自由主義の新聞社兼放送局の桜花新聞、それが秘密裏に得て、政府や反対派を押さえつける脅しにしていた携帯できる核爆弾。桜花新聞の失墜と社長の死期が迫ったことから、一人反逆を企てたその娘。それに協力した警察官。
本書でクローズアップされるのは、警察組織ではなく、それぞれの階級や所属は違うが。それぞれがプロの職人的な警察官という人に、焦点を当てて描かれているようだ。
最後に明かされる犯人に協力する警察官の正体も驚きだが、何よりも箱崎の正体がぶっとんでいる。これはもう通常の警察小説というよりは、別の世界を描いたものという方がいいかもしれない。
古野氏は、本作以降、警察官を主人公にした作品を次々とで出している。「新任巡査」、「新任刑事」ではそのリアルな描写がすごい。ここで登場した秘密警察、図書館を描いた作品も出ている。図書館にもあるものの、どれも分厚くて、描写が微に入りで、読めそうにないので、興味はあるが敬遠してる。
舞台は警察でも警察小説というよりは本格ミステリーにちかい作品で、あまり読み進める気にはなれないかな。