浅見光彦最後の事件、とサブタイトルにあり、最後のところで、光彦が探偵まがいなことはすっぱり諦め、自宅の居候も止めると発言しているが…。
著者のつもりでは、時期を見て復活させる気があったようだが、結局病に勝てず鬼籍にはいったことで、発言通りになった形かな。
浅見光彦34才の誕生会が開かれるという案内状が浅見家に届き、家族はもちろん一番驚いたのは光彦自身。祝う会発起人に名を連ねるのは、今まで光彦が関わってきた様々な事件の、言わばヒロインたち。
バイオリストの本沢が、軽井沢でコンサートを開くのに合わせて、光彦誕生会も軽井沢で行われることになった。その直前、浅見家に本沢が、ドイツ人バイオリストのアリシアをつれて来る。日本語学校にかようという彼女は日本語もできる美人。ドイツ語ができる光彦の母に聞かれて話したのが、日本との縁。
アリシアの祖母は13才の時に来日したという。戦前の話。父親が東京の大使館に単身赴任していた。折しもアリシアの兄エーリッヒが、ヒトラーユーゲントの一員として来日したときに、妹のアリシアも日本に呼ばれたという。
昭和13年当時、光彦の母雪江は生まれたばかり。光彦の父方の祖父陽祐は内務省の官僚で、ヒトラーユーゲントの歓迎会をセッティングしたらしい。日本とドイツは当時同盟国。
その歓迎会で、予定されていた世界的な指揮者フルトベングラーが来日できなかった代わりにと、アリシアの祖母ニーナは、近衛首相に、フルトベングラーの譜面を手渡したという。その譜面は、すぐに側近のインベと呼ばれる青年に渡され保管された。
アリシアの来日の真の目的は、祖母に頼まれ、70年前に渡した楽譜を取り戻すことにあった。そして、それを手助けすることになったのが、光彦だった。それは最初から指名されていたらしい。
光彦の祖父の時代からアリシアの曾祖父と縁があった関係から、光彦に白羽の矢が当たった感じ。
戦時中暗躍した日本陸軍の特務機関、彼らが偽札作りで得た貴金属が保管隠匿されていたらしい。忌部など将来の日本を見据えて隠匿したもの、欲得でそれを手に入れようとした人々。
気骨あるドイツ人が、ヒトラーの魔手から守った貴重な絵画の一部が、日本の同志である忌部らに託された。関係者がなくなる70年後に戻すという約束で。
老人となった忌部らは次の守り手として、光彦に目をつけた。隠匿物はもう少し隠しておくことになった。その管理者として光彦は注目された。
男34才は変わり目だという。だから光彦は生きなおそうとしたのか。