いくつもの警察官シリーズを書いている堂場さんの新シリーズ第一作。
交番勤務から所轄の刑事になったばかりの新人刑事一之瀬の成長を描く作品。彼が所属する所轄は特異な地域だった。皇居を管轄に含む。主としてビジネス街での事件を扱うが、この地域は住民がほとんどいない。仕事で来てるものか観光客が大部分。だから、殺人などは滅多には起こらず、通常起こるのは窃盗事件が大半。だから刑事課も盗犯係りが圧倒的に多く、粗暴犯を相手にする強行犯係も時には盗犯捜査に駆り出される。そんな強行犯係に配属となった新人刑事一之瀨25才が、主人公。
彼が最初に出会った事件が所轄には珍しい殺人事件だった。しかも特別捜査本部が立ち上がり、最初の事件で本部づめとなった一之瀨。被害者は今や大手となり、数多くの傘下の会社を持つIT会社で、持ち株会社の総務課長古谷。人気のない場所で、腹部を何度もめったざしされて殺された。
最初は遅々として捜査は進まない。被害者は若くして親会社の総務課長に抜擢されるほど有能で、真面目。会社で話を聞いても問題はなにも見つからない。残業もあり、友人付き合いをする時間もないほどで、プライベートでも問題が見つからない。
彼が自分自身で銀行口座に5百万円を預金していたが、それだけが疑問。
被害者の会社の人間への聞き込みでは何もわからず、一之瀨の提案で、被害者の携帯に電話を掛けていた友人らしき人々に聞き込みをして行くうちに、新たな事実がわかる。被害者の職務は傘下の子会社を監視し、売り上げアップのために尻を叩くこと。そんな被害者が、なぜか子会社のひとつを個人的に調査していたことがわかる。そこになにか問題があるのか?また、あまりの激務に耐えかねて、退社し、独立することを考えていた。通帳の5百万円をその元手にするつもりだった。ただ、どこから捻出したのかは不明。
一之瀨は、先輩で教育係の藤島と相棒になり、はじめての刑事事件捜査のいろはを学んでいく。
解決のきっかけは、一之瀨らを尾行するチンピラに気づいたこと。一度は取り逃がすも、後日酔っぱらいでバイクを運転したところを逮捕、さらにアパートの冷蔵庫から薬物を見つけ、勾留期間を延長して取り調べるも、なかなか白状しない。
被害者が調べていた子会社が株式上場を前にして、粉飾決算の噂が流れていた。それを調べていたようだが、目的は正義感からか、脅迫目的だったか?あの5百万円はそれか?さらに、長年音信してなかった故郷郡山の実家が東日本大震災で壊れ、新居を作ろうと考えていたらしい。
チンピラが出入りしていた暴力団の組に接触して、彼らとは関係ないことを知ると共に、有力な情報を得た一之瀨。さらに組のロッカーから偶然発見された加害者のコートと凶器。組の庇護を期待できないと知って自白したチンピラ。彼は嘱託殺人をおかした。依頼主はなんと、被害者の上司。大物過ぎて一之瀨らはタッチできなかったが、ついには自白にまで追い詰め、事件は落着する。
はじめての殺人事件、捜査本部を経験しながら、刑事の一歩を踏み出した一之瀨刑事の働きを描いた作品。なかなか面白いし、興味深い。