アナザーフェイスシリーズ第9作で、完結編らしい。
交通事故で妻をなくした大友鉄。小学校に上がる前の息子と二人きりになり、呆然とした鉄。これからは息子のために生きようとして、警視庁の一戦の刑事から事務職の総務課への移転を希望した鉄。ハンサムで、犯人の取り調べに優れた彼の能力を惜しんだ上司が、難解な事件があると、彼を呼んで、捜査につかせた。その記録が、このシリーズの事件たち。
今回の事件は一見通り魔事件と思われたが、被害者の子女がみな同じ中学の生徒だと言う共通点がある。調べていくと、容疑者は中学の教師で、生徒たちの悩みごと相談に積極的に関わっている面倒見のよい教師だった。それでいて、生徒からは暗い印象を持たれていた。十年前にも同じような事件があり、その時も容疑者になったが、決め手がなくて、迷宮入りになっていた。当時の捜査官に話を聞くと、被害者は自宅で児童虐待をしていた疑いがあったが、その確信は得られなかったと言う。
今回も同じ動機ではないかと調べてみると、確かに虐待の実態があった様子。
容疑者をより深く知ろうと、故郷の春日井市まで足を伸ばした鉄。最近、独り暮らしの父親が認知症で行方不明になっていた。その父親は鉄と同じく、妻を病でなくし、息子と娘を一人で育てたと言う。自分の身に引き比べてしまう鉄。
息子は高校卒業と同時に家を出て東京へ。二年後、高校在学中の娘も東京へ家出。父親とは疎遠だったと言う。そして、娘は十年後自殺していた。
調べていくと、母の死をきっかけに、父親に虐待された兄妹。妹は性的被害も受けたらしい。そして、父親から逃げていた妹が、居所を父親に知られ絶望して、自殺した。
妹の自殺をきっかけに、新たな中学で見聞きした虐待する親に怒りを覚えた教師が、制裁のやいばを振るったと言うのが事件の骨子。
容疑者は犯罪を犯したことに後悔がない点に、憤りを感じた鉄は、容疑者の過去から現在までを振り返り、尋問し、間違っていると認めさせようとする。教師の、一般人の域を越えた所業だと。
そして、新たな犯罪に気づく。行方不明と思われた父親を彼は殺して、遺体を埋めたことまでを白状させる。
鉄の息子優斗も高校受験の年頃。今では家事も一人でこなすほどに成長した。進学相談に乗れなかった鉄だが、事件解決の後に帰ると、息子から、鉄の故郷の長野県佐久市に新設される私立高校への進学の希望を伝えられる。全寮制で、受かれば、鉄は時間が不規則だが、やりがいのある、もとの職場の捜査一課に戻ることもできる。彼の周囲の同僚や上司たちも、それを待っている様子。