「みさと町立図書館分館」を以前読んで、知った作家さん。あれもハートウォーミングな作品だったので、これもかと思い借りた。
ペットシッターちいさなあしあとは、盛岡駅の側にあるビルに事務所を構える小さな会社。シッターと名乗ってはいるが、依頼のほとんどは、ペットの看取りだった。死にかけたペットを見守り、棺桶に入れるまで、時には火葬し埋葬するまで見る。
社長は25歳の陽太、十年前にあった交通事故をきっかけに、人や動物の死期を臭いで知ることができるようになった。そのせいで、単身海外で仕事する父がいないため、寂しさを感じていた母親に、その能力を半ば商売にされて、あちこちに引き回され、友達と遊べなかった陽太。テレビ局に売り込みにいったことがきっかけで、陽太は誘拐され、監禁。犯人の母親の死期を言うように迫られたこともある。さいわい、近所にすむ少女の通報で、保護され助け出された。
社員は二人だけ。26才の小島薫と、31才の柚子川栄輔。薫は動物の言葉が理解できる。これまた十年前の交通事故がきっかけだった。母親にネグレクトされていた薫は酔っぱらい運転する母親にひかれそうになり、そばにいた陽太が身代わりにぶつかった。
しばらくたって、探したが、薫は引っ越していて会えなかった陽太。彼女にも変わった能力があるのか確かめたかったのだが。
そんな薫とは会社を立ち上げてから偶然再会した。最初はその能力に興味を引かれた陽太だが、薫は気づいていた。誘拐された彼を助け出したたれこみも、どうやら彼女だったらしい。からすに事情を聴いたらしい。

そんな彼らの仕事での出会いが描かれていく作品だと思っていたら、そうでもない。
第一章では、洋館にすむ老夫人が飼うペットの看取りを依頼される。ペットとの出会いのエピソードまで話を聞き、入院してる主人の認知症まで話を聞いた陽太。それでも夫人には秘密があった。

第二章ではいきなり、十年前の交通事故直後の入院してる陽太が描かれる。患者の中に異常な臭いを発するものがいることに驚く陽太。しかもその人物がまもなく死ぬことと、他の誰にもその異臭がわからないことに気づく陽太。彼の能力に気づいた母親は知り合いのペットの死期を見させるようになり、やがて半ば商売にして金をとるようになる。
誘拐事件後母は手を引き、大学を出た陽太は人に管理されるのを嫌い、会社を起こす。昔母がためた金が役立つ。
そして自分の目で見て選んだ二人の従業員。

第三章。長年海外勤務だった父が帰ってきた。国内に移動というが、会ってみて気づく。死期が見えた。
そんなとき、事務所に来客が。大学時代に同棲したこともある小林絢。今は看護師をしているが、長年飼ってきた愛犬が老衰している。死期を見て、もし一緒にいられないときは看取ってほしいと。彼女の唯一の楽しみである年に一回のコスプレフェスと重なるかもしれないと。
当日絢がでかけた直後に死期を見誤ったのに気づいた陽太は、愛犬を抱えて、駅に向かう。何とか出発前の絢に抱かれて死んだ愛犬。そばにいた薫に愛犬のメッセージを聞いて、自分の生き方を反省する絢。
亡くなった父の思いを母と陽太に告げたのは、愛犬のむぎだった。父の死期を従業員には隠していたが、カラスに教えられたといって薫が病院に来ていた。一緒に自宅まで来た薫がむぎの思いを代弁してくれた。

第四章。姪の出産と重なった愛犬の看取りを依頼してきた竹下夫妻。子のない夫婦にとって大切な姪の帝王切開。
竹下家には看とる犬の他にも3匹の犬がいて、陽太の到着時に外へ逃げ出す。追いかける陽太。老いた犬を背負って追いかける薫。死期の迫った老犬のおかげで、無事3匹を見つけ、戻す。
帰ってきた夫婦に亡くなった犬の思いを伝える薫。留守にすることを事前に説明されたことを愛犬は喜んでいた。逃げ出した3匹を探す過程で、馴染みの散歩道を巡れたことも喜んでいた。その犬は3匹のボスだったと。
逝く命と生まれる命、それが共にあることは素晴らしいことだと、病床の父は言っていた。今になってその意味に気づく陽太。
不幸な生い立ちから無感情に生きてきた薫も、自分が生まれてきた意味を見つけられたようだ。