地方の町起こしの物語。
両親の離婚で、母親についてきた高校生の春海は、東京の雑誌社に就職した母と別れ、群馬県にある母の実家に住むことになる。
喧騒な大阪から来た春海には最初は何もないと思われた田舎町だが。長距離走が好きな春海はジョギングで周囲を走るようになって、自然豊かな風景が気に入る。
そんな春海はジョギング中に出会った誰もが自分のことを知っているのが不思議だった。
祖父に聞いてみると、母の事件で注目を浴びた一家だと知る。母親の紀子は、評判の美人で、幼馴染みの旅館の息子と結婚することになったものの、結婚式当日に逃げ出し、掘れた旅館の客のいる大阪へいったという。そのため、祖父母は一時周囲から村八分の扱いを受け、今もあまり付き合いがない。蕎麦うち名人として知られた祖父の蕎麦屋も今は半ば閉店している。
ジョギング途中で話しかけてきた若者は、なんと母親が置き去りにした婚約者の息子勇太だった。地元の信金に勤める勇太は、かつては温泉町として栄えた地元が衰弱の途にあるのを憂えていた。
信金を盛り上げるには地元の町を活性化させないといけない。こうして、勇太ら若いもので、町の活性化のために動き出す。
町の人々を一つにするために、祭りを創成する。その場で、地元の名物である赤城蕎麦の蕎麦作りを実演し、来客に食べてもらう。
そんな企画を立ち上げ、実現するまでの紆余曲折を描いた物語。
地元のホテルに融資していたメガバンクは、回収のために、温泉街を中心にしたリゾート開発を提案してくる。拒否すれば借金の返済を迫ってくる。
リゾート開発では自然の景観を壊すし、将来の展望も不明。断固反対する信金勤務の勇太と、メガバンクに勤める兄の勇之介と対峙する。
その最中に町の取材に訪れた紀子と、勇太と勇之介の父親である勇一との確執、
蕎麦名人を引き込むために、パティシェ希望だった春海は、祖父に蕎麦作りを教えてもらうことになる。
高校生による蕎麦うち甲子園に出場することになる春海。
それを祭りのイベントにしようと勇太も蕎麦うちをならい始める。
祭りとイベントの成果を見てからと、一旦はメガバンクも返済を先送りにしてくれたが。
担当部長の交代で、またも返済を迫るメガバンクに、勇太は啖呵を切り、侮辱してしまう。信金に肩代わりを要請してきたメガバンクに、待ったをかけたのは、組合長だった。甥の金融庁長官に、メガバンクの横暴を訴え、退けてしまう。
こうして、無事開催された地元神社の神体を模した大蛇の御輿釣りと、蕎麦うち実演会が盛況に行われ、クラウドファンディングも目標額を突破。

銀行員出身の作家江上さんは、銀行を舞台にした作品が多く、あまり好きではないのだが、たまにこういう作品もあり、よかった。