警察小説と山岳小説で人気の著者、それらを合体させたかのような作品がこれ。
主人公はもと警視庁捜査一課の刑事だった江波。殺人容疑の被疑者を取り調べ中に自殺させてしまったために、所轄へ左遷。望んでいった先が、都内多摩地方の奥多摩、小河内ダムに近い集落水根の駐在所だった。妻と離婚していたため、単身で赴任。今は愛犬プールが伴侶。介助犬として訓練されたプールは、ある事件をきっかけに一緒になり、今は正式に飼い犬となっている。警察犬の訓練は受けていないが、それに近い働きをして、名誉巡査部長の称号も授与されている。
近所にある唯一の旅館、池原旅館の主の健市と息子の孝夫に勧められて始めた登山にはまり、今は山の魅力にとりつかれている。孝夫は、山岳の遭難事故や事件捜査にも手助けしてくれる。
そんな水根が山で出くわす事件が描かれる。
最初の事件は飼い犬の山での失踪事件。愛犬と山に上った婦人が愛犬を見失い失意にあるので、助けてほしいと孝夫に頼まれた水根。
遭難した犬は、助けてくれた犯罪者になつき、行を共にしていた。それでも病を押してお現れた飼い主を忘れていなかった犬の純情にほだされる犯罪者。
第二の事件は仙人の失踪。地元民に仙人と呼ばれ親しまれていた老人が近頃姿を見ない。山で遭難したのか、自宅にいるだけなのか?事件性はないが気になって調べ始めた水根は、老人の意外な素性と家族内での問題に突き当たり、無事解放させる。
水根ストアの娘が不審なアベックが山に入るのを見かけたと聞いた水根。やがて男は転落し雪に埋もれているのを発見される。女の行方を追う水根。男はぐれていた孝夫の先輩だった。やがて女も自殺し、男を見殺しにしたことを告白。男が暴力団から奪った覚醒剤を隠したことを知り、プールにより発見する水根。
山岳マラソンとも呼ばれるスポーツ、トレイルランニングに、孝夫に誘われて、水根も始める。そんなとき、互いにバツイチ同士で付き合っている、図書館司書の遼子から、ストーカーらしき男に付きまとわれていると相談された水根。やがて、その男がトレイルランニングの前回大会で優秀な成績を納めた男とわかる。ストーカーではないが、不審な男を見張り、放火を事前に止めた水根。
十年前に山で息子を失踪した男のもとに、十年前の息子のメールが届く。助けを求めている。犯罪に巻き込まれた恐れもあるが、地元の警察で失踪として処理されたため、今さら捜査することも難しい。現場を見に来た父親を案内する水根。失踪当時は仕事人間だった父親も今は、息子が気に入っていた山の風景を愛でることができる。息子は山小屋のオーナーになることを夢見てた。当時は親子喧嘩が絶えなかった。
当時近くで交通事故を起こしていた父親。それを隠していた父親に疑いを向ける水根。息子の白骨遺体が見つかり、本庁に疑われる父親。さらに調べを進め、父親の隠された犯罪を暴くことで、息子殺害の疑いを晴らす水根。その後、両親は息子の夢を引き継ぎ、山小屋経営で余生を過ごすことに。