新酔いどれ小藤次シリーズ最新刊第13作。
縁あって、小藤次と歌人おりょう夫婦の養子となった駿太郎。その実の両親の墓参のために、丹波篠山に旅に出た一家3人の篠山での出来事が、今回のメインテーマ。
一方、小藤次のいない江戸では、いつも研ぎ仕事をしている紙問屋久慈屋の店先に、小藤次と駿太郎の竹人形がつくられ、評判を呼び、参拝者が列をなす。そのうえ、賽銭まで置かれるようになり、一日で3両近い金が集まる。奉行所でひきとることになったものの。
駿太郎の実母お英は、藩主青山の縁戚である名家小出家。美貌の娘を藩主の側室にして、落ちぶれた家を再興しようとした英の父親。身分の低い馬回役の若侍須藤平八郎と知り合い、恋に落ちたお英。あまつさえ、息子まで生まれてしまい、平八郎と息子は難を逃れ、江戸へ向かう。金のため刺客となり、小藤次と対峙し、破れた平八郎は息子駿太郎の世話を小藤次に託した。その駿太郎が殺されかけた折りに、我が身をもって守った母親お英。
成長するまで知らなかった実の両親のことを、駿太郎に知らそうとして、小藤次が企てた今回の旅。
お英の側で仕えた乳母はすでになくなっていたが、その従姉妹と会い、駿太郎は亡き母の面影をたっぷりと聞かされた。
一方、篠山で戦国期に城を構えていた波多野一族。今は青山藩士だが身分は低い。旧山城で野天の剣術をしていた平八郎。そんな実の父のことも知り得た駿太郎。
老中として長年、江戸定府の青山藩主は、家来の気のゆるみがないかを案じていた。小藤次の国許訪問に乗じて、家来の気を引き締めるために、小藤次に藩士の意識改革を依頼したらしい。
長年閉じ込められていたお英の父親は亡くなり、跡継ぎの兄は藩に届けも出さず、篠山を訪れた小藤次暗殺を企て、刺客を雇い、襲うも、小藤次に倒される。
小出家断絶もありえるところだが、兄の切腹と共に、その一子に新たな小出家再興を許すことで、決着する。いわば、駿太郎の従兄弟ができたわけだ。
室町時代にできたお伽草子、鼠草子の原本が青山の居城内の蔵にあることをしり、見せてもらったおりょうは、藩士の娘らとそれを購読する。また元禄時代に活躍した女流俳人の故郷が篠山であったことから、その跡を、小藤次とたどったおりょう。
藩道場に活を入れ、剣術大会を催すことになった小藤次は、勝者への祝儀として、小刀を考え付く。馴染みになった城下の研師の家に、目利きだった先代により集められていた無名の刀を、自ら研ぎあげ、造りも新しくした小藤次。
亡き両親の姿をより多く知ることで、思いを募らせる駿太郎。それと同時に、養父母である小藤次とおりょうとの絆もより強くした駿太郎。
お英の乳母の従姉妹が、駿太郎に初めて会い、墓参に訪れたことを知り、また駿太郎がたくましく成長したことを知り、涙ぐむ場面では、私も泣きそうになった。亡き両親の面影を残す若者を眼前に見て、その思いはいかばかりだったか?
このあとは、どう展開するのか?次作がもう待ち遠しい。