思った以上に読みでのある作品だった。
時代は明治のはじめ、イギリス人が次々と襲われ、首を切り取られ、さらされる事件が起きる。もとの攘夷派の浪人の仕業かと、警視庁の捜査が厳しく行われるも、いまだ捕まらない。
主人公は片足が義足の浪人奥井。旧藩での親友水口の殺害犯である矢島を討とうと追いかけて、今や十七年。家督を弟に譲り、脱藩。明治となり、実家も困窮してるが、今さら戻ることもできず、友の敵討ちだけを願い、生き長らえてきた。
そんな奥井に声をかけてきたのが玄蔵と名乗る男。今世間を騒がせているイギリス人殺しの一味に、奥井の追う矢島がいるらしいという。だから、一緒に探さないかと。玄蔵はもとは草と呼ばれる忍で、ある藩の藩士に仕えていた。その屋敷の若様が今は警視庁の巡査になっているが、彼に手柄をたてさせたいと、犯人探しをしているという。
こうして、手を組んだ奥井と玄蔵は、まずは襲われた3人のイギリス人から調べ始める。闇雲に襲われたというよりは、狙われた原因があるかもしれない。
茶商ハワード、弁護士グレイ、医師エヴァンス。
グレイの義母であるアリシアは、幼いグレイ弁護士の娘と暮らしていた。彼女に面会した奥井と玄蔵は報酬を得て、私立探偵として、襲撃犯を追うことになる。
夫人の話では弁護士は5年前に上海で起きた友人の殺人事件を調べていたらしい。犯人のモズレーは中国人の同僚の助けで姿を消していた。そいつらが日本に来ているかもしれない。グレイは当日、横浜へ誰かに会いに行ったらしいが、詳しいことはわからないと夫人は言う。
こうして、グレイが誰に会いに行ったのかを調べ始める二人。
アヘンを日本に取り寄せ儲けようと画策するイギリス人の商人。グレイのために、上海へ行き、殺人犯モズレーを調べにいった中国人。その中国人は犯人が写った写真を証拠として持ち帰るも、グレイに会うことができず、殺害されてしまう。密かに証拠写真を隠した彼が肌身離さずもっていた中国の書物。それを求めて頭を絞る奥井。
そしてついにそれを手に入れ、事件の全貌に気づく奥井。玄蔵の主である巡査により、包囲された敵のアジトに単身乗り込み、敵の首魁に会う奥井。
それは思ってもない相手だった。十七年の時間を費やして敵を求めていた奥井。敵に討たれたはずの親友水口が生きていた、敵の首魁となっていた。彼もまた代々、草の掟に縛られて育った。抜けるには死ぬ他ないと思い、それを画策して、死人という身分を得ていた。日本を出て上海で暮らしていた。
奥井の仕込み杖の居合いと、友だった水口の拳銃で対峙した二人、相討ちだと思われたが、奥井は十七年の間、身に付けていた友の形見の鍔により、一命を取り止める。
皮肉な結末だが、今後、奥井はどう生きていくのか?
イギリス人に蔑まれ、猿に近い存在と言われた日本人、片足の猿だった奥井にどんな未来が待っているのか?