馬律流青春双六、とサブタイトル。
時は田沼時代の江戸。小普請組の御家人、紗六新右衛門は、日々の暮らしにうんでいた。紗六家には代々伝わる武術がある。馬律流体術。戦後時代に馬具である四尺ほどの棒で応戦したことから始まった武術。新右衛門の母である先代がいる頃にはその実力で道場も最盛期、弟子も数多くいたが、病死した母のあとをついだ新右衛門の覇気のなさに、弟子は次々とやめ、今は中間の又三一人きり。当時は役付きであった婿養子の父も今は隠居し、蔵米取り5石では、暮らしにも困る有り様。
そんな彼が変わったのは、経営指南を生業とする一瀬唯力と知り合ったためだった。最初は中間の又三が噂を聞いて、連れてきた。武家の暮らしをよくするためには、役付きとなるか、副業を見つけることだと言う唯力。当時、新たに役付きになるには、算盤ができるのが一番だった。しかし、新右衛門は苦手。
ならば副業。誰もいない中間長屋を壊して、町人用に建て替えて、貸せばいいと。しかし、屋敷内には母屋と道場があり、それができない。ならば、道場主として経営すればと唯力が提案すれば、新右衛門は覇気がない上に経営能力もない。ただただ、母の思い出として道場を残したいだけ。
唯力の下した診断は、新右衛門が望むことを叶えるには金を得るしかないが、ただそれを目的にすると辛くなる。だから、金儲けの先を考えることを勧めると言って、唯力は退散。御家人株の売却か道場を閉めるしかないと言う唯力に反対する又三。喧嘩別れした又三がある日いなくなる。
そんなときに現れた唯力の助けで、又三を連れ戻した新右衛門。その代わりにと、唯力は新右衛門の長屋の一室を借り受けて、商売指南の看板をあげることになる。さらに、刺激を求めていた新右衛門もそれに助力することになる。
こうして、唯力と新右衛門は、数々の問題を解決していき、新右衛門も活力を取り戻していく。
売れない米屋の副業、厠の肥の汲み取り料金問題、岡場所で素人を騙す男などの問題を解決していく過程で、新興やくざとぶつかるようになり、最後には決着をつける。
普段は頼りない新右衛門だが、馬律流の基本はちゃんと身に付けているので、修羅場に立ち会うと、技が自然に出て、敵を倒すことができる。張りができ、明るくなる新右衛門、商売に対する見方も変わる新右衛門。
そんな若い新右衛門の成長を描いた作品。