花咲小路に住む人々にスポットを当てて描いたシリーズ最新作。
今回の主人公は、高校を卒業し、祖父が残してくれた駐車場経営をする、すばる君。
高校時代からかわいい顔で人気者だった。
幼い頃に母親が家を出て、顔も覚えていない。父親は中学の国語の教師だったが、中学時代に病でなくなる。自動車修理工場を経営していた祖父が、孫の将来を考え、工場を廃業して、駐車場にした。車の運転を祖父に習っていたすばるは、高校生で免許を取り、今は若いながら経営者。祖父が生前商店街の人々に頼んでおいたために、日々の生活は近所の援助で一人でなんとかこなせる。
隣の質屋の娘、瑠夏は幼馴染みで、彼女の母親や祖母にも世話を受けたすばる。彼女とは恋人というよりは兄弟のような間柄。彼女も高校を出ても、進学も就職もせず、家業の見習いをしているため、二人は毎日のように会っている。
商店街に用事があるもの以外にも利用するすばるの駐車場。そこで起こるちょっとした事件を周囲の協力で解決していく。
ある日見知らぬ中年男性がとめていった車のトランクに女性が隠れていた。瑠夏の友人の美和子だった。父親のそぶりを疑い、尾行しようとして、いきなりでてきた父から隠れようとしてトランクに入った。事情を聞いたすばると瑠夏は、彼女の代わりに調べることになる。町内の防犯カメラや、買い物をした花屋の聞き込みから、父親が訪れたアパートを見つけ、そこの住人に親しい人を仲介にして、問題の女性に会うことになる。
小路さんのシリーズ、東京バンドワゴンでは、今は亡き店主の奥さんが、幽霊としてナレーターを勤めているが、こちらにも似たような設定がある。すばるの父親が死後、その魂が、すばるが自宅として使っている赤いシトロエンのバンに、乗り移り、カーラジオを介して、すばると話ができる。その秘密を知っているのは、瑠夏と、もとは祖父のもとで修理工として働いていた弦さんの二人だけ。弦さんは隣の空き家を借りて住み、趣味で始めたアクセサリー作りで生計を立てている。時々、一人きりの管理人であるすばるの代わりに留守番をしてくれたり、車の修理をしてくれる。
商店街のラーメン店で3千円以上のレシートがあれば、契約してるすばるの駐車場の料金はただになる。ラーメンだと5杯分。一人客でそんなに食べるとは思えない男が最近何度か訪れるようになり、不審をいだいたすばるは調べることにする。偶然駐車場を出ようとしたその男の車がエンストし、弦さんが見てくれることになり、その間、シトロエン内で待ってもらうことになる。そして、そこで話したことで、男の身元がわかる。なんとラーメン屋の息子。二代目である現店主の兄だという。弦さんの記憶では40年近く前に不良息子が家出したとか。もしかして、5杯分のラーメン代は兄弟間の金銭問題なのかと心配になったすばる。馴染みの書店主鈴木さんが、昔ラーメン店の長男と同級生で最近もあったことがあると、弦さんから聞いたすばるは、鈴木さんを訪ね、その男の住まいに行くことになる。その結果、一安心。
駐車場に車を預け、隣の質屋に行った不審な男が、車を処分してくれと置き手紙を残して姿を消す。質屋に預けたのは時価百万円の硯。50万円受け取っていった。その男が気になるすばる。シトロエンに付いている父親が、その男は昔の教え子かもしれないという。それなら、同級生に花屋の花乃子さんの旦那になった稲垣さんがいる。シトロエンまで彼を呼び、事情を説明する幽霊の父。坊さんになったこともある稲垣さんは、不審も抱かず話を聞き、協力してくれることになる。
その男中村は交通事故で両親をなくし、天涯孤独だった。自動車修理工になり、真面目に働いていたが、職場が倒産。退職金がわりに高価な硯を譲られた。住む場所も仕事もなくして、死ぬ気ではないかと心配していたすばるたちだったが、幸い、彼は商店街で謎の人物にどやされ、正気を取り戻していた。そしてしばらくは、弦さんの住まいに居候することになる。
最後に登場する怪しい男は刑務所帰りの男。すばるの駐車場に車を預けたまま姿を消す。預かった車のドアには何かが隠されていると気づいた弦さんと中村さん。とはいえ事件性を確認できなくては調べられない。さらに、知り合いの刑事から、その男が昔の女を探していると聞いたすばる。昔の写真を見ると、最近よく来る女性客に似ている。
そんなとき、車に戻ってきた男と、その女性が鉢合わせとなり、さらに、非番の刑事淳ちゃん刑事さんまで現れる。男は女を車に連れ込み逃走。刑事をのせて跡を追うすばる。
女の自宅と思われるところで追い付いたすばるたち。権藤刑事も現れ、車を調べた結果、怪しい粉が発見されたことで、男は逮捕される。女をすばるのシトロエン内で取り調べる淳ちゃん刑事。その女性はなんと、最近駐車場前にできた弁当屋の経営者だった。そこにはすばるもよく通っていた。
逮捕された男と関係がないことがわかった女性。その名前を聞いて、すばるは気がついた。自分を捨てて家を出た母親ではないかと。今更帰ることもできず、ひそかにすばるを見守ろうとして、弁当屋を開いたのではないか。幽霊の父親も気づいていた。名乗ってくれば受け入れる気のすばる。
すばるは、父と共に旅に出る。帰ってきたすばるは駐車場を修理もできる店として、弦さんと中村さんに預け、新装開店した喫茶ナイトでバイトすることにする。