京都下鴨にある旧華族である野々宮家。そこには両親をなくした兄の良鷹、妹の鹿乃が、下宿人である良鷹の友人慧が、古びた洋館に住んでいる。骨董屋として一流の目を持つ良鷹、大学の文学准教授を勤める慧。祖母譲りのアンティークな着物を愛する鹿乃は、高校生十七才。
兄妹は両親の死後、祖母に育てられた。明治時代からある土蔵には、祖母が集めた和服が収まっていた。祖母から開けるなと言われていた鹿乃だが、祖母が生前虫干ししていたのを覚えている彼女は、放置すると着物がダメになると思い、虫干しを慧に進言し、蔵を開ける。
それが始まりだった。祖母が蔵にしまいこんでいた着物には、もとの持ち主に関わる思いが残っていて、不思議な現象を起こすことになる。
鹿乃ら3人で、その思いを解明し、解放することで、普通の着物に戻る。
最初に見つけた着物には御所車が描かれていたが、一瞬騒がしい物音がして、その車が破壊された図に変化していた。そこに描かれていたのは源氏物語の葵の巻の車争いだった。本妻と愛人の争い。もしかしたら、着物の持ち主にもそんな争いがあったのかと、持ち主を探し、話を聞くことに。
次に登場するのは泣き声が聞こえる長襦袢。牡丹灯籠が描かれている。しかも、襟には数字がかかれたカードが縫い込まれていた。12枚のカードには宛名が書かれている。持ち主の女性にまつわる悲恋を探り当てる鹿乃たち。身分違いの女性にシェイクスピアのソネットの番号で恋文を送った。双方とも今は故人。そんな二人の持ち物をひとつに縫い付けたとき、泣き声は消える。
祖母が結婚した十七才の頃の日記を見つけ、読み始めた鹿乃。これには兄が祖母に託された鹿乃への課題が関わっていた。蔵に収まる着物はどれも祖母の好みには合わず、すべて他人から預かったものだと思っていたが、実は1点だけ祖母のものがあるのだという。それを見つけ出すことができれば、蔵の管理を鹿乃に任せるという。それができなければ、蔵の中身は焼却処分した方がいいと。それだけの危険なものが、それらには憑いていると思われる。
政略結婚で、商人の次男坊と結婚した祖母は、引かれながらも、勝ち気な性格から素直になれない様子が、日記からうかがえる。
日記に記されていた歌、建礼門院に仕えた女房が詠んだ星夜賛美の歌。それがヒントになって、着物は見つかり、祖母の死と前後して屋敷に現れた白猫により、すべてが明らかになる。白猫には祖母の思いが宿っているのかもしれない。
兄に合格と言われた鹿乃は、蔵に納められた着物の目録を渡される。ただし、もとの持ち主の名前などしか書いておらず、着物にまつわることは、鹿乃自身で探すしかない。