連作短編集といえばいいのか。プロローグで描かれたエピソードのその後の展開が、別々の人物を主人公にして描かれた、それに当時の日本で起こった重大事件をからませている。そして、最後の編で、複数の人物の相関関係が明らかにされる。
もとはアメリカのヒッピーたちに重用された占い書フォーチュンブック。中国の五行思想と、インドの宿曜占星術をもとにした、それ。将来の吉凶を明らかにするのではなく、不幸だけを明らかにするところに、それの特異性があった。それがもとで、自殺者が多出したために、出版社関係が販売を自粛。それでもそれまでに売れた本が市場に残っていた。古本屋では高価に取引された、その本が松本の書店の倉庫から数冊見つかり、売りに出された。そしてそれを購入した水商売風の若い女性、男子高校生、若いアベック、最後に買ったのは女子高生。同じときに男子大学生も買いたがったが、店員は女子高生に売った。実はあと1冊店員も持っていたのだが。

こうして、店員と客7人のその後の人生のエピソードが次からの各編で描かれていく。フォーチュンブックが関わることで、その物語は明るく楽しいものではなく、どれも暗く陰惨とした味わいがあり、正直面白くなかった。それでも最後まで読んでしまった。

この本を手にしたのは、プロローグで登場するコルトレーンの死がきっかけだった。学園紛争が華やかな頃、それに無関心なノンポリと呼ばれる若者たちが出入りするジャズを流す喫茶店。私の大学時代を彷彿とさせる描写を拾い読みして、読んでみたくなった。推理小説家の北森さんにも関心があり、タイトルは知ってるが読んだ覚えがないということで、図書館で借りた。

年を食ったケン兄と呼ばれた大学生が自殺する最初の話。彼は学生運動の秘密を警察に売っていた。彼の学生証と免許証には記述にいくぶん違いがあった。それに気づいた仲間が彼を自殺へと追い詰めたのか?

第2話の主人公は松本で占い書を買ったアベック。男は新聞記者となり、女はホテルニュージャパンの火事でなくなる。その彼女がなぜか、偽造貨幣の鋳型を持っていた。そのために刑事が訪れた。気になって調べ始める男。それを持たせた謎の犯人が狙ったのは持っている使えない紙幣を貨幣に換える余裕がほしかったのではないか?

第3話では画廊経営者が相棒を殺してしまう。彼の父はは帝銀事件の死刑囚と知り合いだった。真犯人の一味だったのか?

第4話、かつての新聞記者が得体の知れない男サクラダと起こした企業恐喝事件。それのモデルとしたのがグリコ事件。サクラダの犯行動機は失った記憶の蘇生だった。彼はグリコ事件の一味だったのか?

第5話。幼い娘を抱え水商売をしていた女性。新たにできた彼氏に頼まれて闇の取引の運び屋を勤めた。彼女の同僚の殺人事件と、彼女の列車爆破事件。娘の交通事故で助けてくれた男の狙いは、警察の検問突破ではなかったか?

第6話。彫刻家と娘、娘の婚約者で弟子だった男。娘をひき逃げした犯人を憎んだ彫刻家。彼は目的を果たしたのか?娘の像を墓所に埋めた彫刻家は紙の束、大量な紙幣を隠していたのか?

最終話。記憶を取り戻したサクラダは自分を裏切った共犯者を探していた。協力したのはもと記者。サクラダは、松本で占い書を売った店員だった。本を買った女性と親しくなり駆け落ちしたが、離婚。自堕落な生活をしていて知り合ったのが彫刻家と目指す共犯者。3億円事件を起こした。ノンポリ学生の自殺事件で自首して服役した。出所して見つけた分け前は、通し番号が控えられて使えない大量の紙幣だった。
占い書によって結ばれていた彼ら。最後のピースはサクラダを裏切った共犯者。訳を知りたくて、新聞広告で連絡を取り、会った二人。彼に聞かされた因縁は、やはり占い書だった。松本の書店で、最後の1冊を👈に入れられなかった男こそが彼だった。それにより、彼は悲惨な人生を歩むことになり、売ってくれなかった店員を恨んでいた。東京で再会しても思い出しもしなかった。相棒として犯罪をおかしながら、恨みは残っていた。
占い書で結ばれた7人の運命が知らずに交わっていた。ある意味、すべての元凶は、その占い書だったのではないか?