浅草にある古びたアパート。喜壱は久しぶりにここを訪れた。幼い頃は近所に住んでいた。引っ越して、成人してカメラマンになっていた彼は、最近奇妙な恐ろしい夢を見るようになり、さらに彼がとる写真に、いるはずがないものが写るようになり、気味悪く思われて、仕事が激減していた。そんな彼の悩みの相談相手をしてくれた霊能力のあるおばあさんの世話で、このアパートに住むことになった。
アパートはそのおばあさんが大家で、孫娘で、喜壱の幼なじみでもあるかすみが、住み込みの管理人をしていた。情があつく威勢がいい、下町っ子の若い女性。祖母の霊能力を受け継ぎ、町の相談役を勤める。
かすみの両親は隣にある銭湯を経営している。その長い煙突は碧かった。
後にわかることだが、かすみの家族がいる場所は虚穴と呼ばれる、この世とあの世を結ぶ穴を封じるために煙突が建っていた。陰陽師の家系である時雨家は代々その穴を封じ、穴から出てくる悪霊などから人々を守る使命を持っていた。祖母の霊力が衰えたために、まだ未熟な孫娘が跡を継いでいた。そして、今はない、かすみの兄であり、跡継ぎだった長男が、喜壱の体内にいるらしい。
そんなかすみと喜壱に身近で起こる霊的な事件に奔走する様子が三つ描かれる。
最初の事件は、銭湯帰りの女性が痴漢に襲われる事件。じかにどうかされたわけではないが、一緒に帰ろう、という言葉をいきなり耳元でかけられ、悲鳴をあげて逃げ出した女性が続きに現れる。張り込みしていたら、今度はなんと喜壱が声をかけられる。悪霊を見ることができる二人は、その言葉に従い、とあるアパートの一室に導かれる。その部屋の住人こそが原因だった。親友に恋人と昇進を奪われたと思い込んだ男の思いが、体を離れ一人歩きして事件を起こしていた。
第二の事件では、妻と別居し、娘と二人で暮らすアパートの住人に起きる。娘が母親の分身と言える悪霊にさらわれたのを、喜壱とかすみが無事に取り戻し、家族をもとに戻すまでの顛末が描かれる。
第三の事件では、浅草の古道具屋で起こったポルターガイストの事件。店を開けるためにシャッターを開けようとすると、店内の商品が飛び回る。そして、店内の者にぶつかり、怪我を負わせる。祖母の代わりに出向いたかすみと喜壱だが、はじめは何もわからず、店主に馬鹿にされる。何が原因で誰が起こしている騒ぎなのか。やがて、喜壱が昔知っていた老人が孤独死したのを知り、供養に出掛ける。そして、町中を夜にさ迷う、その老人の悪霊の跡をつけた喜壱が、古道具屋に入るのを見たことで、ようやく原因がわかる。孤独な老人には時々息子の嫁が介護に来ていた。妻をなくし孤独だった老人には嫁の行為が嬉しかった。そのために、死期をさとった老人は、嫁への感謝である遺産をタンスの中に封じ込めた。
そのタンスを知らずに古道具屋に売り払った息子。遺産が見つからぬままタンスが売られてしまうのを恐れた老人の幽霊は、それを阻止するために、店を開けるのを妨害した。
隠居した前店主により、そのタンスがからくり仕掛けであることがわかり、無事に嫁への遺産が発見される。