主人公はマンションに住む独り者の鶴川祐作。彼が部屋の整理をしているところから、話は始まる。会社をリストラされ、マンションを売って、故郷へ帰るための整理だった。
そこで同じマンションにいる、カメラ好きな老人から借りた雑誌を返してなかったのに気付き、夜遅い時間に返しに行く。
ベルをならしてもドアを叩いても返事がないため、鍵のかかってなかったドアを開けて、入ってみると、老人が倒れていて、すでに死んでいる様子。そばには花柄の紅茶カップがふたつ。来客でもあったのか?
本来ならすぐに警察に通報すべきだが、ある事情で、一日待ちたかった彼は、そのまま部屋に戻る。マンションに買い手がつき、返事を待っていた彼は、老人の孤独死で、警察が来て騒ぎになると、売買契約がダメになるかもと恐れた。
その直後、若い男が訪ねてくる。祐介が怪しげなそぶりで、老人の部屋に出入りしていたのを目撃し、録画してあるという。警察に知らせない代わりに、頼みがあるという。
老人の部屋に落ちている手帳を取ってきてほしいと。
仕方なく二人で老人の部屋に向かい、入ってみると。なんと老人の死体がない。若い男、高校生の紘人が頼んだ手帳は見つかる。
翌日、時々様子を見に来ていた姪の律子が訪れ、老人は発見される。心臓麻痺による病死と思われた。事件性はないと思われたが。一時的に消えた死体と、戸棚にしまわれていた紅茶カップが気になる祐介。
こうして無職の青年祐介と不登校の高校生の紘人による、ささやかな探偵劇が始まる。

老人がなくなる前夜に、律子がマンションで見かけられていたこと知った祐介は、通夜の席で律子を問い詰め、死体を一時押し入れに隠したことを白状させる。でも警察には通報しないことに。離婚して一人暮らしだと思っていた老人串本は、別居しただけで離婚してないことを、律子は最近知った、串本の妹である母を介護している律子は、伯父の遺産を引き継ぐ気を持っていた。それなのに、妻がいるとわかれば、大部分は妻にいってしまう。だから、隠してしまった。
趣味のカメラのことしか知らなかった串本が、近所の子供を持つ主婦たちに悪い評判を立てられていることを知った祐介は、自分の知る串本には似合わないと思い、さらに追求していく。
近くで小学生の少女が失踪していて、彼女のことを聞いて回っていた串本を怪しいと疑われていた。
告別式の日、なき伯父から棺桶に入れてほしいと頼まれたものがあるといい、律子が串本の部屋にはいる時に、祐介も同行し、律子から串本の悲しい過去を知る。失踪した少女と同じ名前を持つ娘が、串本にはあった。7才で事故でなくし、それが原因で、夫婦仲が悪くなり別居した。それでも、海外旅行でとった写真がついた葉書を、串本は定期的に送っていたらしい。そして、その妻が同じ頃に亡くなったという知らせが届く。
串本はなくした娘と同じ名前の少女を気にかけ、行方を探していたのではないか。
怪しげな女子高生が出入りする部屋が隣にあり、そこに少女が監禁されていると思った祐介と紘人が踏み込もうとした矢先に、その女子高生に化けていた女が、毛布にくるんだものを抱えて逃げ出そうとする。エントランスで、怪しいと思った管理人と、串本を噂していた主婦たちが停めているところに、祐介たちもかけつけ、無事に少女は保護される。
監禁していたのは、少女の生母の妹と弟だった。少女の父親が社長を勤める会社の、ライバル社に便宜を図って、金を得たらしい。
事件は無事終わり、串本の過去と少女への思いを知った、近所の主婦たちは遺影の前で詫びる。
友人の万引きを知らせた疑いで、孤立し不登校になった紘人は、この事件で、思いを新たにし、学校に通うようになる。祐介も故郷でやり直すことを決意する。

最初は、警察沙汰にもならず、祐介と紘人のかけあいばかりで、つまらなく思えたが、結果はよかった。さすがに、大崎さんは、今もお気に入りの作家だと思える。