浅見探偵シリーズのひとつ。
静岡県沼津市に住む漆原肇子が、地元の銀行支店長の息子との縁談話が舞い込んだのが、事件の発端。父はなく、母親睦子と、会社が倒産して東京から戻ってきた兄宏と3人暮らしの慎ましい漆原家にとっては良縁だったが、喜ぶ母に対して、肇子はなげやり、兄宏は不安げだった。
そんな兄が不吉なことを妹の肇子にいった。もしも自分が死ぬことがあったら、使っているワープロをある男、浅見光彦に譲ってほしいと。そして、兄のフルネームを打ち込んでもらいたいと。その男は大学時代に兄がいた応援部の窮地を、得意の推理で救ってくれたのだと。
その直後、兄は海岸で水死体で見つかる。自殺とも事故ともわからないという警察に対して、肇子は殺人を主張するも取り上げられない。肇子が東京へ浅見を訪問して、帰宅してみると、母親が刺されて倒れており、後に死亡。いまわの際に残した言葉は、シシノハマダノコ。
ワープロに残されていた新潟の一地方の風物を描いた文章が消去されていた。母の死を知って、悔やみの便りが舞い込み、肇子は母のふるさとが新潟だとはじめて知る。何かをひた隠しにしてきた母。
肇子と浅見は別々に母親のふるさと新潟を訪れ、過去のある事件を浮かび上がらせる。越後獅子の発祥の地、戦後の混乱期に、巡査としていた祖父と母、獅子舞の子として働かされていた子供たち。彼らの結束は何よりも強いものだった。そして、悪知恵で彼らをリードした浜田という男。
肇子の兄宏は悪名高い詐欺投資会社に勤めていた。そして、彼らが集めた莫大な資金の隠匿を頼まれたらしい。しかし、最後には仲間を裏切ろうとして、殺された。
宏がワープロに隠していたナンバーの羅列は、資金を貸金庫に納めた銀行を表していた
。ひとつは犯人一味に取り出されたが、残りは金庫内のまま。警察と言えど、無闇に押収できない。
行き詰まった捜査を進めるために、浅見は怪しい銀行支店長を脅し、その動きを見張ることにする。それによって、どうにか一味は逮捕される。隠し資金も押収され、事件は解決を見る。