京都の鬼門にある神社、錦天満宮の鳥居脇の家で、クリスマスの朝、主の妻が絞殺体で見つかる。家中のドアも窓も密室状態で。
夫はその朝、近所に住む姉に2階で一人寝ている娘を引き取るのを依頼して、鉄道に飛び込み自殺した。伯母が来たとき、娘の枕元にはクリスマスプレゼントが置かれてあり、目覚めてそれに気づいた娘は嬉しくてはしゃいだ。父は鋳物工場を営んでいたが、いつ破産してもおかしくない状態。従業員も次々に首にし、今は一人だけ。酒飲みで、妻に手をあげることもあった。夫の財布に挟まれていた遺書には、従業員の国村のせいだと書かれてあった。そのために、その男、国丸は逮捕され、一時自供もしたが、裁判でそれを翻し、10年後の今も係争中。
神社のそばまで街が広がったために、鳥居の両端が道路を挟んだ2軒の家の2階部屋内に突き出ていた。その片方で事件は起こり、逮捕された従業員は反対側のアパートの一室に住んでいた。
殺された妻はお好み焼き屋を営んでいて、8才の娘は一人で過ご過ごしていた。そんな彼女の相手をしてやっていたのが、国村だった。彼もまた似た環境で育ったために、余計娘のことが気になっていた。酒乱気味の夫に愛想をつかし離婚を考えていた妻。国村に色目を使う妻。屋内に国村の指紋があったことと、夫の遺書から逮捕された国村だったが、密室状態での殺人方法の解明ができず、結審できない裁判。
事件後、父親の姉である伯母に引き取られ育てられた娘、楓は今は受験生で、予備校で知り合ったのが、本作の語り手の受験生で、名探偵御手洗の知り合いだった。
楓の伯母は両親が始めたアンティックの時計が壁一面に飾られた喫茶店、猿時計を引き継いでいた。ある日から、その時計のひとつが知らぬ間に振り子が動きだし、驚いた。鍵で開けて振り子を止めても、何度も動き出す。中学に入った頃の楓は、夜中に猿が来て動かしたと言ったらしい。
最初は密室のなぞには手がつかなかった御手洗だが、事件当時、付近で睡眠障害を訴えるものが出たこと、それがもとで夫婦喧嘩が絶えなかったこと、さらには精神に異常を来すものや引っ越したものもいたという話を聞く。あるいは仏壇の位牌が裏返ることあり、夫婦喧嘩の原因にもなっていた。
そして、ひらめいた。振動だと。似た振動数のものが近づくと共振、共鳴する。それがヒントになって、御手洗は事件の全貌を看破する。
拘置所の国村に面会して謎解きを披露する御手洗。国村も認めたが、裁判で証言する気はないという。自分が無罪になることは、真犯人が楓の父親だということ、しかも、育ての親である伯母の弟が殺人犯だと公開されてしまう。それでは、楓も伯母も不幸になるからと。
国村を説得できず拘置所を出た御手洗と弁護士は、その点を考慮して、国村の無罪判決を勝ち取り、10年の拘置所収監の補償を得る。
出所した国村を迎えた御手洗らには、楓が同行していた。事件の朝のクリスマスプレゼントがはじめてのものだったために、サンタクロースの存在を信じていた楓。プレゼントに添えられていた百貨店の景品だった花の種により、楓はプレゼントしてくれたのが国村のプレゼントだったと気づいていた。
孤独だった楓にとって、いつもそばにいてくれた、こうして一人前に育つことができたのも国村さんのお陰だと感謝の言葉をかける楓に、国村は呆然とする。