初めての作家さんだが、タイトルに引かれて借りた本。少し予想とは違う展開の話だったが、結構よかった。
成績はいいが、いじめられっ子の主人公、公立中学1年の入江一真は、いじめっ子に強要されて、駄菓子屋で万引きを働く。店のおばあさんがいないときに店番をしている、不良にしか見えない大柄な男、登に捕まり、いいわけをする。すると、いじめっ子を教えろと言う。そして、彼の部屋に連れ込まれる。何をさせられるのかと怯えながらついていった一真が頼まれたのは、なんと小説本の朗読だった。登は小説家になるのが夢だったが、当時は知られていない病気のために、文字を読むことも書くことにも不得手だった。それでいて、物語を考え出して話すのが得意だった。だから、彼が考え付いた話を書いてくれる相手を探していた。その手始めに、いろんな小説の朗読を聞いて、勉強したいと思っていた。
万引きを見逃す代わりだと言われて、渋々始めた朗読会だったが、それがいつか楽しみになっていった。
小説を読んで感想を言い合ったり、それに触発されて登が考え付いた話を書き留めていった一真。
こうして始まった二人の小説家への夢は、数年後に叶うことになる。着想は登で、書くのは一真。書いたものを朗読して、登の感想を聞いては、書き直しを続けて行き、ついに二人は文学賞に応募し、受賞。雑誌に連載され、本にもなる。二人で一人の覆面作家としてデビューする。
登は売れない漫画家と組み、評判になる作品も産み出す。その着想のヒントは、一真の朗読で知った有名作家の骨子を換骨奪胎したものだった。
そんな売れっ子になった新人作家の一真と登のコンビが解消されたのは、登が漫画家を酒席でぶちのめして、傷害罪で逮捕されたためだった。失踪した母のために背負い込んだ借金を払うために、登はあくどい取り立ての仕事もしていたことがばれて、刑が確定し服役した。
コンビ解消で小説家になることをあきらめた一真が再び小説家になろうとしたのは、服役中の登のために、小説の朗読をテープに吹き込み、刑務所に差し入れたことがきっかけだった。それを勧めたのは、腑抜けのように生きていた息子を発奮させようとした、看護婦だった一真の母だった。受刑中に育ててくれた祖母をなくした登の身元引き受け人になってくれた母。
刑期を終え、出所した登から朗読テープの礼を言われた一真。小説家になるために発奮した一真は、後に単独で小説家として、再デビュー。そんな彼のもとに届いた3年前のハガキ。たどたどしく、1行のみに書かれた登の言葉。一真は登に連絡を取る。彼の妻と思われる女性から、登が死んだことを聞かされる。さらに、いつか登と一真の二人の出会いから小説家としてのデビューまでのことを、一真が書くはずだという登の言葉を聞かされた。そして生まれたのが、この作品だっというプロローグ。

朗読を通して二人がいろんな小説を読み、それいついて議論するところが、なかなか興味深く、楽しかった。
一真の初恋の相手など、出会いや事件もあり、なかなか読み概がある作品だった。