引き続き、浅見探偵シリーズの1冊。古都の京都と奈良を舞台にした旅情ミステリー。
勤務する出版社で、文芸編集から、美術書編集への移動を内示された美果は、気分転換にと、好きな京都奈良の寺巡りの旅に出る。
京都の寺で写経をしていた彼女は、一人の老人と関わることになる。彼女同様仏像に魅せられて一人旅に出た娘が行方不明のために探しているという。娘の書いた写経がないか調べたいと。折しも、その場に居合わせた浅見光彦は、娘の居所を探すなら、彼女が泊まったホテルで聞き込みをした方がいいと忠告。話の流れで、同じホテルに泊まる予定の美果がホテルの従業員に聞くことになる。
聞いてみたら確かに泊まっていたが、その後のことはわからないと。
気になった浅見はホテルを変えてきて美果に会う。話を聞いた浅見は突っ込み不足だと。さらに追求して、ホテル内の料理屋で失踪した娘が、女性と会食したことが判明するもそこまで。
しばらくして、奈良の谷で他殺体が発見され、警察が捜査を始める。新聞で知った美果は失踪した女性ではないかと、その父親のもとに電話するも、要領を得ない。どうも父親だといった人物と、名刺の人物とは別人のようだが訳がわからない。
ホテルで聞き込みをしたことが原因で、美果と光彦は警察に目をつけられる。
奈良の名物旅館日吉館閉鎖の噂で、取材に来ていた光彦は、そこに泊まっていた美果に案内されて無事に取材を終えることができた。
美果の印象を光彦は弥勒菩薩に似ていると思い、記事にもそう書いた。それが縁で、事件に興味をもつ大学教授が関わったことで、話が展開していく。
戦時中に日吉館近くにあった新薬師寺の秘仏、香薬師仏盗難事件があり、いまだ行方は不明になっていた。教授は学徒出陣する前に日吉館に泊まり、仲間が秘仏盗難したことに気づいていた。首謀者は今や一流企業の社長であり、しかも失踪した娘の父だといった男が名乗った名前は、その社長の部下だった。
香薬師に惑溺した男が、それに似た女性に異常な愛を持つようになったことが、いくつかの事件の背後にあることに気づいた浅見は。首謀者と会見し、すべてを闇に葬ることに同意して、話は終わる。
結末はスカッとしない分、不満は残るが。
行方知れずの国宝級の秘仏が、浅見の言う通り、世に出るなら、それでもいいか。