今度は高校の合唱部の物語。読んでいて、小説というよりは実話に近いなと思ったが、あとがきによれば、やはり実話をもとにしてできた作品らしい。合唱部の活躍をそばで見ていた著者が、彼の目に映じた合唱部員の気持ちなどを想像によって膨らませて書いたから、ノンフィクションではないが。
NHKの全国合唱コンクールの第70回大会で、課題曲の歌詞を一般募集した。それに選ばれたのが、多摩高校合唱部員だった女子の詩だった。
3年生だった彼女が卒業したあとに、入学した二人の男子、飯島と乙川を主人公にした物語になっている。
中学時代運動部だった飯島と、合唱部希望だった乙川が、新入生勧誘として声をかけてきた2年生のユカリに、誘われるままに合唱部に入学するところから始まる。
混声合唱団は、4声から成る。女子のソプラノ、アルトと、男子のテナー、ベース。飯島たちが入部する前には、男子は2年生が二人しかいなかった。男子がいないと合唱は釣り合いがとれない。だから飯島たちは半ば強引に誘われ、結果的に10人あまりの男子が揃う。飯島と乙川が割り当てられたのはベース。各パートの人数は19人、15人、6人、5人となり、ベースはやはり一番手薄だった。テナー希望の乙川もだからベースに。
元気が取り柄で、誰よりも元気に声を出すものの、パートメンバーにも合唱団全員とも合わないで苦労する未経験の飯島。
全国でも知られた顧問の先生が転校して、顧問の先生が変わって指導を受けるようになった部員たち。
いくつもの問題が次々に起こるものの、部員たちの努力と協力で、まとまった合唱団となり、次々とコンテストを勝ち上がり、ついに全国大会にまで進んだ彼ら。
そして、その後のエピソード。ユカリさんは教員となって、新しい学校で合唱部をつくり、全国大会まで勝ち上がる。今は北海道の大学で合唱部に在籍していた飯島は、招かれてクリスマスコンサートにゲストとして、ユカリ先生の学校を訪れる。生徒たちの合唱を聞き、ユカリ先生と言葉は交わさないものの、心がけ通じる思いを感じて去ろうとする飯島。窓からお礼を言われた飯島は、遥かに後輩の部員たちを応援することばを応えた。