美術品の真贋を見極めることに秀でた美術コンサルト神永シリーズの1冊である短編集。
彼を尊敬する、よきアシスタントともいえる京都の美大准教授佐々木の事件簿ともいえる作品。
最初に登場する美術品は岡倉天心直筆の仏像のデッサン。それを掛け軸にしたものを佐々木に売り込んできた亡き祖母の馴染みの美術商。真贋の目利きに自信がない佐々木は買うのを控えたが、話を聞いた神永は即決して購入。天心作ではないと知りながら買ったようだ。では誰の作品か?
岩波文庫の表紙絵をデザインしたのは誰か?という謎をめぐって、佐々木は旧友の大阪の屋敷を訪ねる。幻の作家のものなのか?
大阪で標準語を教える塾を開く女性が、出会った男性から送られたアンティックの柱時計。一見特に変わったところもない時計に秘められた意味は何か?
日本は中国の属国かどうかで、言い争う女傑二人の間に入った佐々木と神永が導き出した真実とは?
卒業する学生のために、コレクターに絵を売り込もうとする佐々木。天心作と伝えたものの、実は違っていた。神永の助けで新たに導き出した作者は鴎外だった。医師となったばかりの鴎外が美大の講師を勤めたことがあるという。鴎外と天心に造詣が深いと自負するコレクターの弱点をついで、売ったことに忸怩たる思いの佐々木だが、愛する愛弟子のためならばと。
この愛弟子が以前読んだ作品に登場した函館の美術館に就職した女性なんだ。未払いの授業料を工面してやるために、佐々木は己の良心を封印した。
探偵役も助手も好感が持てる美術探偵シリーズはいいね。