シリーズ7冊目で、最終巻のようだ。このあとに、番外編となる短編集が今春に出ているらしい。
京都の下鴨にある野々宮家は、旧華族で古びた洋館に住んでいる。今は女子高生の鹿乃と、古美術商を営む兄、良鷹の二人だけで住んでいる。両親が早くに亡くなり、祖母によって育てられた二人。祖母が亡くなり、蔵に溜め込んでいた古い着物の管理を託された鹿乃。何らかの思いが残るアンティークな着物や小物、祖母の目録を参考に、それらのいわくを調べ直し、残っている思いに決着を作っていく。それがこのシリーズのテーマのようだ。
野々宮家の先祖は巫女だったらしく、女系の中に不思議な能力を受け継いできた。鹿乃もそれを祖母から受け継いでいる。

今作には3編が収められ、3点のアンティークが登場する。
最初に登場するのは、帯。表と裏に別の柄がついた両面帯。片側は手まりの刺繍、反対側には立ち雛の刺繍がある。しかも、この帯からは鈴の音が聞こえる。目録には見知らぬ名前が書いてある。調べてみると、祖母の女学校時代の同級生に、あった。帯の秘密を調べようと、けんもほろろの扱いで追い返される。仕方なく、別方面からその女性のことを調べていくと、少しづつ事情が明らかになっていく。その女性が帯にこもる怨念を誤解してると感じた鹿乃は、本当の思いを明らかにし、その女性のわだかまりを解消してやる。

次に登場するのは、野々宮家の女性の着物だった。祖母が残したコレクションの最後に残しておいた着物。目録には、桜の園、ちりめん地桜柄着物、野々宮英子、とある。
英子という名に覚えがない、鹿乃と良鷹は、家系図を広げてみてわかる。曾祖父の妹の女性だった。古くから付き合いのある骨董店の主に聞いてみると、二十歳前に失踪したという。それを祖母は、山で神隠しにあったと言ったという。しかも書き置きを残して家を出たらしい。探してみると、西行の歌を書き記した短冊がいくつか見つかる。
桜の名所である吉野に、野々宮家は持山があった。管理人に連絡してみると、どうやら英子さんのことで話したいことがあるという。
華族の娘でありながら、使用人と恋に落ち、家を捨てた英子さん。分家して平民となり、吉野で恋を全うした英子さん。自分で絶えることのない女系の種を縫い込んだ着物を祖母に、そして鹿乃に残した英子さん。
着物に描かれていた桜の花は一旦消えてしまったが、鹿乃が英子さんの着物を着て、祖母の帯と鹿乃の小物を一緒にしたとき、鮮やかに桜はよみがえった。

最後の編では良鷹のもとに、中学時代の同級生から着物が送られてくる。さらに、彼が死に、遺品の骨董品の引き取りを頼んできた。
祖父母と両親をなくすという、にた境遇にあった良鷹に一度だけ声をかけてくれた同級生がなぜ?
病身だった同級生は十才の幼い娘を残していた。そして血は繋がらない一族のものが財産を狙っていた。祖父を見殺しにした親戚が最愛の娘を幸せにしてはくれないと思った死に際の同級生が頼ったのは、同じ純粋な心を持つと信じた良鷹だった。親戚の悪事を明らかにして、幼い娘を引き取った良鷹。結婚もしないで、娘を得た。