都内から遠い北海道の 大学に入学し、3年目を迎える啓太の自治寮での日常をたんたんと描いた作品かと最初は思ったが、彼には二つの事件を経験する。子供たちが成人し、仕事人間の父との会話もない母親が家出し失踪。のちに、ボランティアで知り合った男性といるとわかるが、数ヶ月連絡もない状態となる。双子の兄だった啓太はどちらかと言えば、何でも自分でできるために、母とは疎遠だった。弟が専門学校を経て就職した。母親から逃げるように遠くの大学に入った啓太だが、いなくなって初めて、母親のことを考える。そして悩む。
失踪していた母は男と別れ、啓太が参加している大学案内ツアーに匿名で参加して、啓太と再会。父を呼び寄せて、母は自宅に戻る。しばらくして、昔の夫婦関係には戻れないと思った父親は、別居するために転勤し、単身赴任する。
もうひとつの事件は、高校時代に生徒会に参加していた啓太が尊敬し、親しくしていた会長だった寿の自殺。母親の失踪を知って、啓太を慰めるためにか、北海道の啓太の寮まできてくれて、旧交を暖めたばかりの友達の、いきなりの死に、ショックを受ける啓太。
これら二つの事件を挟みながらも、北海道の大学での暮らし、緑のつたに覆われた自治寮での生活がのびのびと描かれていて、それなりに楽しいものだった。
巻末には、啓太の高校3年時の姿が描かれた作品が納められている。啓太がいかにして北海道の大学へ行くことになったのか、志望動機が明らかになると共に、寿の当時の姿が描かれていて興味深い。