倒敍形式のミステリー、福家警部補シリーズの最新の第五作。今回は四編の短編が所収されている。
最初に犯人が犯罪を起こす場面を描いてから、探偵が登場し、犯人が見逃したわずかな異状をとっかかりして、犯人を追い詰めていき、最後には自白に導き逮捕する。痛快で楽しいが、それを倍加させるのは探偵の人間的な魅力だろう。テレビドラマのコロンボ刑事とか。どちたかといえば、一見抜けた印象とポーカーフェイスに騙されて、犯人は知らず知らず追い詰められていく。
今回扱われた犯罪は、皮膚科医師の恋人殺し、妻を殺そうとした夫が、反対に殺された事件、師匠の名誉を守ろうと、同じ弟子でもあった男を殺す女バーテンダーの事件、恋人を嫉妬で殺された証券マンが、数年越の計画で敵討ちの殺人をおかす事件の4作。
印象的だったのは京都へ研修に向かう福家警部補が、新幹線の待合室で見かけた不審な男に注目し、わざわざ隣の席に座り、話しかけると共に、東京の同僚や部下を使って、男の身元などを調べることで、犯人と確信し、罠を仕掛けて、逮捕に持ち込む。見事と言うよりは、神がかりにしか思えない働き。まあ、架空の世界だからいいか。
この最後の事件だけ、恋人の復讐という、同情すべき動機だからか、印象が強い。
大蔵さんは様々なミステリーを書いているが、私が好きなのは初期の落語雑誌の編集者が主人公のシリーズ、警視庁動物係の刑事のシリーズと、この福家警部補シリーズかな。
山岳を舞台にしたものは敬遠してるし、たまに読むユーモア感が強い作品も苦手だな。