またしても額賀作品に感動させられてしまう。
主人公は大手の食品会社に勤める周作27才。大学時代の先輩でシングルマザーの紫織と結婚する予定だった。それが実家に一人住む父親が脳梗塞で倒れ、丸一日たって発見されたために、意識を戻さないまま昏睡状態になる。父親を東京の病院に移して、毎日のように見舞いに訪れながらも、落ち込んでいた。母親のことは何も知らされないまま成長した周作は、父が死ねば天涯孤独の身になることに寂しさを痛感していた。
紫織の連れ子の真結との接し方に悩んでいた周作は、父親になることにも家族を持つことにも悩んでいた。
自分はどんな両親のもとで生まれたのか、家族はどんなものだったか、それが知りたくなる。父親にはもう何も聞けない。倒れる前に父親が差し出した周作名義の預金通帳だけが手がかりだった。毎月わずかづつためられた金が数百万円になっている。父の貯金ではないと言う。誰からの貯金か?
父親の戸籍謄本を取り寄せて、初めて母親の名前を知る。ネットで検索してみると、一件の傷害致死事件が浮かび上がる。仕事で家にいない父親、実家の両親の介護のために家を空ける母親、そにために大学生の皆瀬がバイトとして家政婦のように住み込んでいた。週刊誌によれば、大学生は母親の愛人で、別れ話がもつれて、喧嘩になり、母親は突き飛ばされて、頭をうち死んだ。犯人皆瀬は服役し、数年後に出所している。
面影のない母親のことを知りたいと、皆瀬の行方をおい始めた周作。訪ねて回るうちに、違和感を覚える。施設育ちで、年上の女の愛人となる男のイメージとは皆瀬はかけ離れている。彼になついていた自分を思い出したり、彼に接した人々の証言を聞くうちに、周作は事件の真相に気づいていく。
そしてようやく見つけた皆瀬。拒否する彼を説得して、事件の真相を聞き出す周作。
実の両親の介護と子育てにストレスを抱えていた母親は、皆瀬を家政婦として家において、自分はなにもしない父親と口論がたえなかった。その日も包丁を持ち出して来た母と争って、彼女を突き飛ばし、死なせたのは父親だった。自首するつもりの父を説得して、身代わりを買って出た皆瀬。父が犯人で母が被害者、そのうえ祖父母には育児ができないとなれば、周作は施設行きになる。自分になついていて、好きな周作を、自分の生い立ちのような身にはしたくない。周作だけの将来を考えてやってくれと言う皆瀬の言葉に同意した父親。
真相を知ったからといって、今さら冤罪を公開する気はないが、皆瀬と会い、話すことで、周作は忘れていた過去の思い出をよみがえらせていく。そんなある日、世間的には犯罪者の自分がそばにいては、周作や紫織、真結の将来に影を落とすと憂えて、密かに姿を消した皆瀬。嘆く周作。
クリスマスイブを祝うために出掛けた先で、真結が誘拐されそうになる。犯人は離婚した父親。娘の引き取りを前から、彼の両親共々要求していた。犯人ともみ合う周作を助けてくれたのは皆瀬だった。真結を連れて逃げた周作に代わり、犯人にぼこぼこにされたものの、皆瀬は無事だった。もう離すまいと思ってか、周作は自宅に皆瀬を連れて帰る。
皆瀬を連れて、紫織たちと水族館へいったあと、周作は皆瀬を連れて父の見舞いに訪れる。昏睡状態の父親だが、枕元で周作と楽しそうに話す皆瀬に微笑んだような気がした。