ようやく気になっていたこれを読了。
テレビドラマになった方を先に見ていたから、読んだ気になっていたようで、原作とはやはり違うようだ。
三流の広告製作会社ユニバーサル広告社は、家賃が払えなくて、社長石井の独断で移転してきた。かつては大きかった禅寺の門前町にできたさくら商店街の入り口にある和菓子屋岡森本舗の二階。三階も空いていて、住居できることから、杉山は強引に住み込みを命じられる。
社長以外3人だけのユニバーサル。
元は大手の広告会社でクリエーターとして有名だった杉山だが、家族を省みない仕事と遊興のために、離婚し、幼い娘とも別れた。元妻は再婚し、そんな母親の目を盗むようにして出された娘から来る葉書が、今の杉山には何よりも癒される。誤字の多い便りに注意しようかとか、娘の悩みに答えようと、何度も返事を書きながらも、いまだに投函できない杉山。新しい父親ができたのに、今さらしゃしゃり出るのは悪いと思うし、元妻に知られたら、二度と連絡できなくなるかもと恐れて。

戦後火災で縮小した寺、さらに鉄道が近くを走るのに反対したために、今では駅からも離れた商店街は寂れるばかり。店主の高齢化とあとつぎぶそくで、いずれシャッター化するのも遠くない商店街。
旧態依然とした商店街の幹部店主たち、新たに加わった若者も関わりを拒否するため、まとまりがない。
最初は長年チラシを作ってきた印刷会社がつぶれたために、大家に頼まれて、商店街の6月に行われるさくら祭りのチラシを頼まれた杉山。それを、広告会社としてまともに作ろうとした杉山らユニバーサルの面々は、商店街活性化のためにと、新たな企画とチラシのプレゼンテーションを、商店会の前で行うが、反対多数で断られる。
しかし、そのプレゼンがきっかけで、商店街の若者たちが、活性化のために動き出す。一緒に夜警をして放火犯を捕まえたことが転機になり、商売のあり方を考えるようになっていく。
近くの団地には高齢者ばかりがすんでいて、商店街に足を運ぶのさえ困難だと知ると、団地内で青空市を開く試みをしたり、例年とは一風変わったさくら祭りにしたり、次第に改革に向かって動き出すが、改革案を商店会の総会で披露しようとするや、幹部連中、特に会長と、その弟の不動産屋に反対され、頓挫しかける。新たな試みとして、商店街を撮る映像をCMとして公開する案もかろうじて、採択される。
わずか2分の映像だが、それにより、商店街は生まれ変わる。客を呼び、より積極的に商売をするようになる商店街。
この物語にはもうひとつ、若い二人の恋話が挟まれる。寺の跡継ぎの光照と教会の娘の初音の恋。パンクロック好きの二人がコンサートで知り合い、互いに引かれていく。同じ町内にすんでることにはじめは気づかなかったが、互いの素性が知れた頃には心も近づいていて、寺と教会ということで、光照は悩むが、初音は姉に勧められて、気持ちを優先することにする。そんな二人だったが、光照は仏教系の大学を卒業していて、3年間修業しないと、寺の跡継ぎになれない。ぐずぐずと修業を伸ばしていたが、父親に厳しいことで有名な寺にはいることを決められて、初音とは3年間会えない。
電話も手紙も出せない光照にかわって、初音は修業道場まで足を伸ばし、光照との連絡方法を思い付く。托鉢する彼を待ち受けて、手紙を交換する。一途な女性は強い。
ラストは新しい父親の転勤で九州へ行くことになり、もう娘には会わないし、手紙も書かないと返事した杉山に、文句言うために、娘が杉山を訪ねてきて、再会するシーン。パソコンを使えるようになった娘は、父親の名前を検索して、CMで流れた商店街のビデオの制作者として、父の所在を突き止めたという。幼い娘が少女になって再会した父としての杉山の気持ちはどんなだろう。

予想通り、おもしろく感動的だった。