大学学生部の職員ユウカに、強引に斡旋されて、バイトにいった女子大生恵麻の話。
以前読んだことがある「メグル」の続編のような設定。
初めてあったユウキさんは、依頼者の名前も状況もすでに把握しているようで、気がすすまないバイト生に、半ば強引に勧めて送り出す。そのバイトによって、苦境だった状況が改善し、奇跡をもたらすと言う話が、前作にはあったが。
今回は女子大生恵麻が、バイトをする。気が弱く、自分に自信をもてない彼女は、高校時代の親友が、一緒に大学に入らず、芸能界に飛び込んでしまったことで、寂しさと敗北感をいだいていた。
そんな彼女がフラりと訪れた学生課で、ユウキに押し付けられたバイト先は、ショッピングセンター内にある忘れもの係。
老いた親の面倒を見るために休職している課長。主任の水樹さんと部下の橋野二人だけの部署は、おちおち休息もとれないために、バイトを募集した。
10万円以上のものは分けて、別に保管するが、その他のものは種類別に記録し、保管する。施設内の店舗などから毎日送られてくる忘れもの。一見ごみ同様なものを保管するなんて、恵麻には無駄なことにしか思えなかった。
それでも、いくつかの忘れものに接していくうちに、他人にはごみ同様な物にも、持ち主にとってはかけがえのない思い出や意味があることに気づくことで、恵麻は認識を新たにしていく。さらに個性的な二人の職員との交流によって、閉ざされていた恵麻の心も少しづつ開かれて、成長していく。
靴べらを忘れたという老婦人、数ヵ月も前になくした弟の形見の手袋を探す兄。
痴呆で徘徊していた老人がなくしたものは家族の愛なのか?何度も同じものをなくすことで知り合った職員、橋野の友。その友は何を求めて同じ忘れものをするのか?トイレに忘れられていた女子の制服。それは誰のものか。取りに来た男生徒と女生徒とは嘘をついていた。最後にやって来た持ち主の秘密は?
3月末から5月始めという、中途半端な期間のバイトを勤めあげた恵麻。大学学生課のユウキを訪ねた恵麻が聞かれたのは、最初の時、恵麻が何を求めて学生課へ行ったのか?バイトする気ではなかった。彼女は最近は交流のない、芸能界で活躍する親友とお揃いの傘を求めて来たのだった。親友との距離を感じ、もう忘れようと、お揃いだった傘を捨ててしまった。バイトをはじめて、心が成長した恵麻は、親友に連絡し、旧交を暖めようとした。捨てた傘を取り戻したいと、忘れものとしておいてあると思い、探しに来た。
しかし、傘はもうなかった。なんと大学内にもロケに来た親友が、見つけて持っていったという。
そして恵麻は気づいた、自分が生きていないことを。普通の人には透明な彼女は見えない存在だった。でもなぜか、学生課のユウキさんには見えた。彼女の紹介でいったバイト先の二人の職員にも彼女が見えて、話も交わせた。
最後のドンデン返しにびっくりするものの、嫌な気はしない。そういえば最初の叙述も、幽霊だからかと納得。
ひとの心に触れた話で、なかなかよかった。