これもまた、地方の商店街活性化のひとつとも言える。
福島のとある町の商店街が舞台。シャッター通りにはなってないが、どの店も主は老人ばかりで、跡継ぎはおらず、亡くなれば閉めるしかない商店ばかり。
その中の1軒、仕立て屋の店のウインドウにある日、奇抜なものが展示されて、騒ぎとなる。それはかつてヨーロッパの貴婦人が着用した下着のコルセット。なかなかの上物で、目のあるものが見れば芸術品にも見える代物だった。
だが、学生も往来する商店街に展示するのは不都合だと騒ぎになる。
折しも通りかかったのが、高校生のアクア。正式には青色と書いて、アクアマリンと呼ばせる、奇妙な名前をつけられた男子。父は失踪して母親と二人暮らし。しかも母親は自宅でポルノマンガを書いて生計を立てている。本になったこともあるプロではあるが、それほど売れてるわけでもない。しかも自分の限界以上に注文を受けては締め切りに追われてばかり。中学生の頃からアクアは、その手伝いをするようになり、今では背景の景色はもっぱら彼の仕事といってもいい。一時は母の仕事をひた隠しにしていたが、ある日幼馴染みの同級生により、クラスにばれ、学校中に知られてしまった。表だって非難はされないが、後ろめたい気分で、鬱々としていた。自分のしたいことがないのも一因。団地住まいのアクアだが、ここには真鍋女史と呼ばれる詮索好きで、女性蔑視に敏感な女性がいて、
仲間を引き連れて町を巡回している。
母親はヨーロッパを舞台にしたマンガを書くために、かなり詳細な文献を集め、研究した上で書いている。お陰で、手伝うアクアもいつしかそれらに精通するようになっていた。
商店街で見つけたコルセットをみて、すぐにそれが何かを知ったのも彼だった。それがきっかけで。店主の老人、伊三郎に気に入られたアクアは、店にかよって、コルセット作りを見学するようになる。
そのコルセットを腰の弱った隣の老女にプレゼントしたことが、この物語の発端かもしれない。あまりにきれいな布で作られたコルセットを、下着として着用するのに忍びないと思った老女は、着物の上からそれを装着した。
それを見て驚いたアクア。これもひとつのファッションになっている。単なる下着としてよりは、こうした装飾的なファッション品として、コルセットを作った方が売れるのではないか。
こうして英国紳士服の仕立て屋だったテーラー伊三郎の改革運動が始まる。
参加するのは奇抜なファッション感覚をもつ、幼馴染みの明日香。近所の老女たちもモデルとして、写真館の主である老人は写真とたぐいまれなパソコン操作により、新た店をネット上で紹介し、宣伝することになる。アクアの友人でネットオタクも協力する。
伊三郎の亡き妻が刺繍を教えてもらった老女には、コルセットに縫い付ける刺繍をしてもらう。
母親のマンガの手伝いで絵がうまいアクアは、伊三郎の新しい店の設計も手掛け、それをもとに店の改造も行われる。
すべてが順調に進んでいたときに、アクアはいきなり保護されてしまう。虐待児童だと訴えられ、専門家が現れ、事情聴取を受け、さらに、彼は施設に入れられてしまう。母のマンガの破り捨てた絵をひろいだし、それを復元して当局へ訴えたものがいる。こんないかがわしい絵の製作に息子を手伝わせるのは虐待に当たるのだと。母親はあっさり認めたために、アクアの抗議は受け入れられず施設へ入れられ、母と別れさせられた。のちに、施設は出られたものの、しばらくは、母は実家で暮らし、祖母がアクアの面倒を見ることになった。
そして、伊三郎の新装開店の前に、母と再会し、同居できるようになる。ただし、アクアは二度と母の手伝いはできなくなった。
危ぶんだ新装開店のテーラー伊三郎は、信じられないほどの客が詰めかけ、久しぶりに人で埋まった商店街をみて、日頃冷淡だった近所の商店も協力を申し出てくる。これをきっかけに、商店街の再興を考えるようになる。
女性蔑視に断固反対している真鍋女史の抗議に完全と向き合うようになったアクアの母親。押し掛けた女史を自由を束縛するすべてに反対するという正論でなんとか追い返したものの、これから互いに議論していくことになるのだろう。
形ばかりの安定にしがみついて、自分を騙して生きることはもうやめる。自分のしたいことをしていこう。アクアは猛烈に勉学意欲がわいてきた。進学して、もっと勉強したい、自分なりの真理を追求し、それを糧にして生きていこう。