高校生吹奏楽部の甲子園を目指す生徒たちとコーチの先生を描いた青春ドラマ。
茶園基は、憧れの高校に入ったものの、中学時代に頑張った吹奏楽部を続けようとは思っていなかった。
中学時代に吹奏楽を始めたのは、当時無名だった男子高校が地区予選を勝ち抜けて、吹奏楽部の甲子園の全国大会に初出場し、優勝を勝ち取ったのを見たのがきっかけだった。その部の部長でアルトサックス担当の不破暎太郎に憧れ、いつか同じ高校に入り、同じように全国大会を目指そうとして、吹奏楽を始めた。しかし、中学での3年間の結果は一度も全国大会には進めなかった。それで、使い果たした思いがあり、高校ではもうしないと決めていた。憧れの先輩のいた高校は、今や男女共学になり、進学校に力を入れていて、吹奏楽部も地区予選止まりの学校になってしまっていた。
隣にすむ幼馴染みで2才年上の鳴神玲於奈が3年生で部長になっている吹奏楽部に誘われたが、断っていた。
そんな彼が決意を翻したのは、病気がちの顧問の先生が、部活のコーチとして、あの憧れの先輩、不破を呼んだことを知ったから。
全国優勝を勝ち取った後、不破は大学に進学し、教員となって吹奏楽部の指導をやりたいと思っていたものの、教員試験にすべて落ち、最近までは塾の講師を勤めていたが、それも今はやめて、フリーターだった。吹奏楽部の指導だけではたいして給料はでないが、母校の吹奏楽部を指導し、全国大会まで導けたら、何かが変わるかもしれない、そんな思いから指導を引き受けた。
コーチとして憧れの先輩が来ると知り、諦めかけていた吹奏楽部に、逆にのめり込んでいく茶園。
二人を軸にして、物語は進む。
最近は予選落ちばかりで、活気がない吹奏楽部を何とかしたいと思った不破は思いきった改革を行う。1年の茶園を部長に抜擢して、部の再編成をしようとする。新入生でいきなり部長にされ、周囲の反感を受けながらも、不破の思いに答えようと演奏にのめり込む茶園。どんなにうまくなっても、自分に納得できない彼は、次第に部員から浮いてくる。
さらに、3年生の部員には受験勉強との兼ね合いが問題になってくる。全国大会を目指すためには、何もかも、勉強も受験も塾も家族とのふれあいも犠牲にして、演奏に打ち込まなければいけないという強迫観念にとりつかれ、家族から抗議や注意を受けることにもなる。
茶園の父は長年勤めた会社をやめ、独立することを決めていた。うまくやっていけるのか、金は得られるのか、不安に駈られた母親からは、吹奏楽にのめり込むことに反対され、葛藤を抱える茶園。
そんな不破コーチ、茶園部長の葛藤や演奏を軸にして、部員たちの様々な思いを描きながらも、彼らは地区予選、関東大会を勝ち上がり、全国大会にまで進んでいき、結果は銀賞となったが、手応えのある演奏ができるまでを描いた青春ドラマになっている。
吹奏楽部の奮闘を描いた作品は以前にも読んだことがあるが、今回も読んでいくうちに引き込まれてしまった。