西のはての年代記第1巻。
第3巻で南の国アンセルで活躍し、第2巻でカヴが最後にたどり着いた詩人オレック、グライ夫妻。第1巻の物語は高地出身だった二人の成長を描いた物語。
高地にすむものを低地のものは魔術使いだと言って恐れた。代々受け継がれるギフトと呼ばれる能力を持つものをプランターにした一族が散在して暮らす高地。
主人公はカスプロマントのプランターの跡継ぎだった。幼馴染みのグライの両親はロッドマントのロッド一族とバーレー一族のプランターだった。
物語は思春期を迎えたオレックとグライの前に現れた放浪者のエモンに問われるまま、自分達一族のギフトについて話す場面から始まる。グライの父のギフトは見えないナイフで目の前の相手を一瞬で倒す能力を持ち、グライが受け継いだ母親のギフトは呼びかけ。ヒト以外の生き物に呼びかけ、話しかけることができる。母は狩人のために獲物の獣を呼び寄せることを生業にしているが、グライはそれを嫌っていた。
オレックの父が持つギフトはもどしと呼ばれ、造られたものをもとに戻す破壊の力だった。
エモンにあった頃、オレックは眼帯で目を塞いでいた。そのギフトが狂暴で制御できないため、身近なものを破壊しないようにと目を見えなくしていた。
その後の章では、オレックとグライの幼い頃からが、成人したオレックの語りとして、描かれていく。
跡継ぎとなる息子オレックにはギフトの兆候がなかなか見られず、父親カノックを悩ませる。そして、偶然父と一緒に出掛けたオレックの前で強大な破壊が行われる場面に遭遇した。父はギフトを制御できないオレックの仕業だと主張し、一時的に目を封印することになる。
高地人は代々近隣の一族と婚姻してきたが、オレックの父が適齢期になったときに、婚姻可能な唯一の女性を、長年敵対してきたドラム一族に奪われてしまう。そのために、父は低地に遠征して、母を得た。ギフトを持たない女性と婚姻した父。愛した女との間にできた息子を跡取りにしたかった父。
遠く離れてすむドラム一族が間にいた一族を次々と滅ぼし、ついにカスプロマントに隣接することになる。彼らのギフトは一見目立たない、その呪文にかけられたものは、何年もかけて体内から破壊されていく。人々をそれを信じ、恐れるがゆえに、ドラム一族に服従し、敵対するものも数年後には滅ぼされてしまう。
こうして、隣接したドラムが友好関係を求めてきた。オレックの家族を屋敷に招待するという。遠縁の娘をオレックの相手として紹介するとも匂わせる。
訪れたドラムの領地内には、盗まれた牝牛がおり、引き合わせられた娘は白痴同然の娘だった。互いを牽制して、すぐには帰れなかったオレック一家。病についた娘の看病をした母親が、呪文を密かにかけられたように、次第に弱っていく。危険を感じたオレックの父は、盗まれた牛を取り戻し、密かに帰る。
やがて病身になった母は気づかなかった腹の子を流産し、次第に弱っていく。そしてついに亡くなる。最後の時を一緒に過ごしたのは父親だった。目を見えなくしていたオレックは最後の瞬間に眼帯をはずして、死ぬ直前の母の姿を見ただけだった。
ギフトの兆候が現れないオレックは次第に自分のギフトに疑問を抱くようになる。母が生前、本がない高地に文化を伝えようと、オレックのために作った布製の本と、それに書かれたいにしえの詩と物語。誰もいないときに眼帯をはずし、それを読むことで癒されたオレック。
疑問を父親にぶつけて、自分にギフトがないことを告げたオレックは以後、眼帯をはずす。
そんなときにドラム一族が領内に侵入しようとしているという知らせがあり、立ち向かうために出掛けたオレック。
結局ドラムの領主親子とオレックの父は刺し違えて死ぬ。
以前放浪者のエモンに言われた言葉に引かれて、オレックとグライは結婚し、高地を去ることを決意する。高地にいてもギフトを持たないオレックと、ギフトを狩りのために使いたくないグライには、いきる術がない。
低地でなら、オレックの詩の才能、語り部の技はいきるよすがになれるし、グライなら家畜を適切に世話することができる。不安だが試してみる価値はあると思った二人は高地を去り、低地へ向かう。
物語はここで終わるが、その後の活躍は、第2巻3巻から、読み取ることができる。
西のはての年代記全3巻を読み終えた今、改めて、ル・グウィンの代表作「ゲド戦記」シリーズを読んでみたくなる。本は実はすでに持っている。なのに未だに読んでいない。「指輪物語」と同様。
時間がほしい。