ル・グウィンの「西の果ての年代記」というシリーズ第2巻。
広大な大陸で、東の地から果てしない砂漠を越えて、西の果てにやって来た人々。今は南北に広がるさまざまな民族に分かれ住んでいる。このシリーズでは、南北に広がる地の北の高地を舞台にした第1巻の「ギフト」に引き続き、今回の舞台は南の地アンサル国の首都アンサルで、主人公は由緒ある一族の血を引く少女メマー。「ギフト」の主人公が成長して登場し、この都市の運命に深く関わっていく。
平和で自由貿易で栄えていたアンサル。東の砂漠地帯の彼方からオルド人が侵略してきて、アンサルは支配下に置かれ、一神教を信じるオルド人は、さまざまな神に祈るアンサル人を迫害し、奴隷として使役する。言葉を使うのは神だけだとし、本を悪魔的なののとして嫌い、すべてを奪い、捨て去った。かつては、交易の中心であり、学問や芸術も盛んだったアンサル。
メマーが暮らすガルヴァ館は、古きアンサルの伝統の最後の砦だった。その地下には秘密の図書館があり、主である道の長だけが管理していた。オルド人から貴重な本を守ろうと、アンサル人はひそかにガルヴァ館に本を持ち込み隠してもらった。
かつて館の家事全般を取り仕切っていた母親におぶわれて、地下の秘密部屋を訪れたことがあったメマーは、母の死後に、ひそかにその部屋に出入りしては、本で遊んでいた。偶然、長に見つかったメマーは、それを機に、文字を学び本を読むようになる。それは彼女を後継者にしようと長が思ったからだった。
メマーは名族の母が侵略してきたオルド人に襲われてできた子だった。容姿はオルド人に似ていたが、心はアンサル人。いつかオルド人を追い出すと決めていた。
彼女が17才になったときに、グライとオレックがアンサルを訪れる。高地生まれの詩人で、諸国の失われた文芸を収集していたオレック。彼はアンサルの図書館を見たいと思いアンサルに来た。動物と意思を交わすことができる妻グライとライオンをつれていた。
アンサルをオルド人から解放しようとする人々、語り部で人心をつかむことのできるオレック、オレックをひいきにする総督、三者の動きにより、アンサルに激動が起こる。その最中に、メマーは、秘密図書館以外のガルヴァの秘密に気付き、それにより、不思議な声を聞くことで、自分の使命に目覚めていく。
遥か昔に日の昇る地から西の果てにたどり着き、ここにとどまることを決意させた神の声。移住した人々は異能のギフトを持っていたために、故地を追われた。そして彼らを受け入れた神がいた、その場所がガルヴァ館のあるところだった。そして、ガルヴァ館はお告げの場だと伝えられてきた。神々がいる地。
それを継承することになるメマー。
メマーの第二の母となり、館を切り盛りするイスタ、オルド人総督の妾になり、後に妻として遇されたアンサル名族の出であるティリオ、総督イオラスと息子イドールの確執、館の馬屋番のグディット、生きていればメマーと同い年の娘を持っていたグライのメマーへの気遣い。
アンサルの解放というメイン以外にも、あれこれ魅力がある物語だった。
第3巻もすでに借りているが、実は最後まで読んでなかった第1巻も読んでみたくなった。