久しぶりに1冊を読了。以前、「葬式組曲」を一冊だけ読んだことがある作家さん。それに関連する葬儀屋を舞台にしたミステリーということで借りたが、最後まで読んでみたら、なかなかいい。
川崎の廃ビルで発見された身元不明の遺体。所持品もなく身元もわからず、多忙を理由に事故死として処理しようとした本部。それに異をとなえ、殺人事件として捜査しようとした刑事滝沢。彼に言わせれば、不審な点がいくつかあるものの、殺人と決めつける明らかな証拠もなく、遺体として葬儀屋に渡されようとした時に、変化が訪れる。
何と死体を受け取りに来た若い葬儀屋の主が、遺体は自分の父だと言う。
葬儀屋の鏡だと言われていた御木本幸大だという。還暦を迎え、葬儀での些細な失敗を苦に引退し、ぶらぶらしていた幸大。死の少し前に、息子宛に旅に出るとメールしていた。
滝沢が最初に抱いた疑問は、彼の高校時代の同級生だった幸大の長男が、遺体を最初に見た時の反応、父ににてるが別人だという思い。そして、跡を継いだ次男が遺体との対面で漏らした、殺したのか、というつぶやき。遺体の死亡時刻と、手にはめた腕時計の止まってる時間との日数の違い。工作されたと思われるが、その理由がわからない。アリバイ工作にはならない。
上司から止められたため、無理矢理休暇をとって、一人捜査を進めていく滝沢。
いまの主である次男は、なぜか故人が嫌っていた葬儀をすることに熱心。何のために、周囲の反対を押しきってまで、盛大な葬儀をしようとしているのか。
故人は以前、連続女性殺人鬼に疑われたことがある。現場で古参の者に見かけられていた。アリバイが成立して、他人のそら似となったが、今回の死と関わりがないのか。
なすすべもなく、大々的に行われた葬儀。滝沢は、そこで次男のもくろみに気づく。何をしようとしているのかに気づいた滝沢は、彼の先に話を切り出して、悪役を買って出る。
滝沢にはかつて名刑事だと言われ、いまは監査役となった父親がいる。父は公の場で、一般人は黙っていろと、侮蔑的な発言をして、謹慎している。その父に反発していた滝沢だが、この事件のクライマックスで、はじめて父の発言の真意に気づく。
刑事って、こんな風にも市民を守っているんだと気づいた。