久しぶりに読んだ山本作品。この本はずいぶん前から気づいていたが、タイトルの銀幕の神々が、任侠映画の主人公たち、特に高倉健を指すと知り、敬遠していた。しかし、読んでみると、よかった。早く読めばよかった。
文房具を扱う大会社の重役の主人公、岩瀬修。還暦を過ぎても独り者の彼のもとに、実家の義姉から連絡がある。認知症になった兄の施設への入所報告と共に、中学校の同窓会の案内が来ていると聞く。タイムカプセルを掘り出すと共に開くことになった同窓会。
それがきっかけで、岩瀬は中学時代の思い出に浸ることになる。そして、その後の人生が回想されていく。
地方都市の商店街の酒屋の次男として生まれた修。クラブ活動にも勉学にも挫折気味だった彼が出会ったのが任侠映画だった。商店街の映画館弥生座の無料上映券が店にあった。友達に誘われて、それではじめてみた任侠映画、その主人公である高倉健に一目惚れした彼は、大学にはいるまで高倉健に憧れ、彼に笑われない男になろうと努力し、次第に変わっていく。
店で立ち飲みに寄るやくざものの中間のおじさんと知り合ったり、父親をなくして引っ越してきた病院暮らしの従姉妹との出会いと別れ。
優等生の兄が社会人になってからやくざにはめられたとき、救ってくれた中間のおじさん。おじさんのおかげで学校の不良に絡まれても抜け出すことができ、従姉妹の弥生のお陰で勉学に身を入れて、進学校に入れ、大学にも入れた。彼女に、高倉健に笑われると発破をかけられて、体を鍛えたし、大学で徒党を組んでいる学生運動の連中の誘いに乗らずに済んだ。
たまたま下宿した文房具店に、近所の中小企業の客がいたことから思い付いた事務用品の配達事業。大学を中退して入社した子会社が大きくなり、本社が入れ替わり、今や重役となった岩瀬。
結婚には失敗し、家族はできなかったが、打ち込める仕事を見つけられた。すべてが満足とは言えないが、これも運命だと思えば納得できる。
従姉妹との出会いと死に別れ、彼女がタイムカプセルに残したもの、中間のおじさんの事故死と、のちに出会った彼の娘との思い出話、認知症の兄を施設に送ることを考えていた義姉の二人で生きていくという決断。これらに、涙が出そうになってしまった。こういうところが、山本さんはうまいし、好きな理由だな。