十一代将軍家斉の正室の行列が愛宕下で刺客に襲われる。狼狽する警護の侍の中に飛び込んできて、鮮やかに刺客を倒した武士。白野弁蔵、表御殿の灯火を扱う提灯奉行だった。さらに、御目付神保の支配下にあり、影のご用を果たす役にもついていた。直心影隆の達人である腕を見込んでの役。
薩摩出身で美貌ながら気丈な正室は、一部始終を見守っていて、白野に一目惚れをする。とはいえ、白野は御目見え以下の身分。普通は声もかけられない。白野も五十近くまで独り身を通してきたが、これはという女性にめぐりあえなかったため。こちらも身分違い、既婚者と知りながら一目惚れをする。
そんな正室のためにと、犯人探しをする白野。
正室は剣と短銃と二度にわたり刺客に狙われながら、白野の機転で難を逃れた。どうやら下手人の背後にいるのが、織田信長のために影のご用を勤めた一族の末裔だとわかる。信長を安土様と崇めて、天下に対して画策してる。
将軍に献上される公家の姫君一行が神奈川で皆殺しにされ、その身代わりになって、大奥に潜入した一味は、前もってそれを知った白野が密かに大奥に潜んで、撃退する。
敵の目的は正室を殺し、後がまになることで、将軍を動かそうとしたのか。将軍を狙うつもりはない様子。白野の働きで、賊は殲滅されたが、背後にいる闇の一族に関しては、何もわかっていない。正室を守る白野と闇の一族の暗闘が始まったらしい。
初老の将軍正室と御目見え以下の武士の秘めた恋の始まりでもあった。
目付の配下として、奉行のどら息子に乱暴された芸者の代わりに、そのどら息子を叩きのめしたことが縁で、白野には、もと芸者の君蝶と、彼女を慕う鳶職の朝吉という家来とも仲間とも言えるものがあり、白野の上司である御目付神保も白野を援護している。どうやら新たなシリーズの幕開けの作品に思える。
身分違いの恋ということにひかれたのか、続編が出たら読んでみたい。