こちらも一風変わった恋愛話。
主人公碓氷は研修医。本来なら大学の地元である広島で研修をするのだが、神奈川県葉山にある富裕層向けの全室個室の療養型病院で研修をすることになった。彼の父親が借金を作り、若い女と海外へ逃亡、残った借金を抱えて苦労した母と妹と彼。高額の給料がとれる医師になろうと懸命に勉強をし、米国留学の勉強までして、心身に異常を来した彼のためにと、教授が斡旋してくれたのが羽山の病院。一ヶ月の研修を始めた彼に任されたのは、3階の十二人の患者の午前の回診。
その回診の最後に診るのがゆかりだった。2才年上の彼女の病気は悪性の脳腫瘍。頭の中に爆弾を持っているようで、いつ爆発するかわからない。場所が悪く、手術もできない。死までを安楽に過ごさせるしかない。さいわい、両親もないが、なき祖父が残した莫大な財産があり、高額な部屋で好きなことをして過ごすことができる。
貧乏のために苦労した彼は最初、彼女に反感をもつが、毎日回診を続けていくうちに、死を待つばかりの彼女の気持ちもわかるようになり、次第に仲良くなっていく。彼女の遺産を受けとる遠縁のものがいるようで、病院は得たいの知れないもに監視されている。
彼女に乞われて、海外に失踪して、なぜか国内の山で事故死した父のことを話した。父が残した遺品まで調べた結果、ゆかりは、父の失踪の真相に気づく。家族のためにと自己を犠牲にした父の行動の意味を知った碓氷。父が家族のために残した財産のありかまでゆかりから指摘された。失踪直前、幼い碓氷に父が言い残した言葉。ゆかりの謎解きと共に、それを思い出す碓氷。

研修を終え、広島に戻りながらも、彼女のことが忘れられない碓氷の後押しをしてくれたのは、同じ医師仲間のもと恋人。気持ちを告白するために葉山へ行こうとした彼に届いた知らせは、ゆかりの死亡。それも横浜の路上で一人でいて発作に教われた。そこに疑問を抱いた碓氷は、ゆかりの死の状況を知ろうと、上京する。
羽山の病院ではなぜか、ゆかりは幻になっていた。カルテも職員の証言も口を合わせたように、ゆかりなどいなかったことにされている。
ゆかりの遺言書について調べ始めた碓氷は、死の間際に新たに作られた遺書があったことに気づく。それは、敵に奪われたのか?あるいは、死の間際にゆかりがどこかに隠したのか?一人で、最後の日のゆかりの行動をおった碓氷はついに、遺言書を発見。同時に襲ってきた遺族の手の者も得意の空手でたたきつぶし、警察に。
一件落着かと思えたが、碓氷には疑問があった。葉山の病院スタッフはなぜ、ゆかりの存在を消そうとしたのか?何か違和感を覚える。それを考え続けて、碓氷は気がついた。あれを画策した影の黒幕がいる。病院に行き、確証を得た碓氷は、黒幕がいる別の病院へ単身向かう。
種を割れば影の黒幕は、碓氷にゆかりと名乗った女性だった。彼女は襲撃者に怯える同じ患者と名前を交換していた。死んだのは本来の女性で、彼が恋したゆかりは、まだ生きていた。彼女との短い生活を共にすることを決意した碓氷。輝かしい脳外科医への道を断念し、研修した病院で勤務医となり、ゆかりと生きることを決めた碓氷。